ISBN:4313860053 単行本 ジャネット・G. ウォイティツ著 新沢 ひろ子 学陽書房 1999/05 ¥1,680

ちょっと調べてみたら、この重要な本を、私は全然紹介してなかったのですねー。しまった。

ちょっとまたアダルトチルドレンの話が出ているので、ここでちょっと紹介しておきたいです。

私もアダルトチルドレンだったので人間関係に問題がでやすかったわけですが、私の場合は、恋愛関係がダメでした。ほんとにね、もうなんていうか、うまくいってて、あと一歩関係を深めれば継続的に良い関係が築けるのに、という、その一番良い時にこそ、内面から何やら妙な衝動がわき起こって、その関係をぶち壊してしまう。

ずっとそういうことばっかりやってきてました。

で、どうしてそういう衝動が起きるのかが、全然わからなかった。

で、この本です。

もう、タイトルの通りだったので、どーっと読んだ。
そしたら、驚くなかれ、「衝動的な内面的な強烈な情動」で理不尽な行動をする人の実例ばっかりが出てくるのですな、この本は。

もう、驚きました。そんなんばっかしや。

もともと「アダルトチルドレン」という概念は病気の名前ではなくて、アルコール依存症の親を持つ子供が、心の問題を抱えやすいので、その子供のケアをしている現場の人たちから、一般的傾向の総称として出てきた言葉なわけです。

で、この「衝動的な内面的な強烈な情動」っていうのが、自分だけの内面的な「個性」だと思っていたら、そうではなくてアルコール依存症の親を持つ子供みんなに共通する特性であるということが分って「個性なんかではない」ということに気づくというわけなのですね。

で、これが「アルコール依存症の親を持つ子供」だけでなく、ギャンブル依存症であれ、依存的人間関係を持ちがちな親であれ、とにかく「依存症」の親を持つ子の場合はおしなべて同じ傾向があるということがわかってきた。

この本はそういう実例をたくさん集めてある本で、アダルトチルドレンが、いかに理不尽な恋愛過程を送ってしまうのかが、山のように載ってます。

ずっと長距離恋愛で関係を維持してきたのに、いざ相手の仕事の条件が変わって一緒に住めるという時になって急に「別れる」と言い出したとかですね、もう、そういう理不尽な話ばっかり載ってる。

みんな「アダルトチルドレン」なわけです。

で、これにどういう共通項があるかと言うと、単純に言うと、

●うまくいくのが怖い。

なんですね。なんだそれ? なんでうまく行ってることが怖いんだ? って事になる。
で、これがようするに、「幼い頃に親から与えられた理不尽な行動による恐怖」が原因なわけですよ。

いつもは愛情豊かな親なのに、アルコールを飲むと急に怒りっぽくなったり、泣き出したりする。理解できない。この理解できないことが起きることが日常化してしまうことで、「世の中は思い通りにはならないのだ」という刷り込みがされてしまうのですね。

だから、うまく行くと怖くなる。うまく行った分だけ悪いことが起きるように感じてしまう。
そういう形のない恐怖に無意識にとらわれて、そこから逃げ出せなくなっちゃうんですね。

これねぇ、「無意識」だから問題なんですよねー。
ほんとに幼い頃の記憶というのは「言葉」化されてないので、もやーっとした感覚とか、強い印象、あるいは強烈な情動だけが残っててキチンと整理されてないわけです。

だから、そういう内面から湧いてきた恐怖みたいなものは、どういう状況から湧いてきたかをキチンと思い出して、大人になったいまの知識と判断力で整理してしまえば、まぁ別段気にするような事ではないんだと、あっさり片付いたりもするわけです。

いや、そんな子供のころに感じた無茶な衝動などは、仮に湧いてきたとしても、理屈で「おかしい」と思えるなら、「ははーん、これはどうも妙なとらわれが心の中にあるな、気にしないでおこう」という態度が取れればそれで充分対処できる種類のものなんですね。

でも、この「衝動的な情動」を、やっぱりどうしても「これこそが私の個性なんだ」と捉えがちなんですね。そこからこの問題は複雑化してしまう。

その情動というのは、ようするに、「食べたいお菓子を、親からダメですと止められて、その我慢している状態こそを良い私ととらえている」というような事なのです。

なんらかの形で自分の強烈な望みが、親によって拒否されて、それを我慢する、あるいはなんとか正当化して「良い子」になろうとして内面でゴチャゴチャと理屈づけした感覚が今にまで残っているということなわけです。

なので、その「衝動」自体が偽物なんですね。なのに、子供のころの未整理な「感覚」だけが残っているから「これこそが自分だ」とかたくなに思おうとしてしまう、という訳です。

このあたりは、岩月謙司さんが提唱した「家庭内ストックホルムシンドローム」の理論が、僕としては一番納得できたし、この理論のおかげで、そういうムダな衝動とはおさらばして、子供ではない、大人になった自分の判断力で「そんな理不尽な衝動が『私』であるはずがない」と思えるようになりました。

そう、そんな「理不尽な衝動」が『私』であるはずはないのですよ。

でも、子供のころの未整理な感情や感覚にいつまでもとらわれていると、ここらあたりの冷静な判断というのができなくなってしまうんですね。

この本は、そういう実例、特に、恋愛にまつわるたくさんのアダルトチルドレンの実例が載っていて、僕にとってはとても衝撃的だった本です。

そういう「衝動」を「これぞ自分だ」と思いこんでいたら、同じような問題を抱えている人間をいきなりたくさん見せられて「あなたも、この人たちと同じでしょ? だから、その感覚は偽物なのよ。信じないほうがいいわ。」と諭されたような印象の本ですね。
(あ、ちなみに女性が書いた本です。)

うーん。
本当は家庭内ストックホルムシンドロームについて説明したかったんだけどなー。
それはまた今度にしよう。

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