ISBN:4772405615 単行本 白根 伊登恵 金剛出版 1997/10 ¥2,100

AC(アダルトチルドレン)の家族・兄弟は確実にみんなACだし、AC同士は惹きあうから、AC同士で友達になってしまって、ACの回りにはACがいっぱいいる。そういうものなのです。

そして、そのACたちとどう付き合えばいいのかが、ここ数年の私の大きな悩みでもあったのです。

私は回復の途上にある人間だから、もとからまともな人より、うんと敏感にAC的発想を感じ取れてしまう。「その発想はまずい!」とどうしても注意したくなってしまう。それも過激に。なんせ、回復途上にある人間ですからね。まずい発想がいかにまずいのかというのが、「自分の痛み」としてわかってしまう。他人事ではないわけです。

やっと「健全な考え方」に沿って生きるということを学びはじめたのに、身の回りに不健全な発想が散見されるとえらく気になってくるわけですね。

そんなこともあって、アダルトチルドレンに関して、もう少し幅広い知識が必要かも知れないと思って、いろいろまた読みあさっていたのですが、結局、とどのつまりは、もっとも原典ともいうべき

「アダルト・チルドレン―アルコール問題家族で育った子供たち」
という本に戻りました。

これは前に紹介した

「なぜいつも、あなたの恋愛はうまくいかないのか―アダルト・チルドレンの恋愛と結婚の神話」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4313860053/ref=lm_lb_1/503-2108546-9436706

(私の紹介日記)
http://diarynote.jp/d/12917/20051224.html

を書いたジャネット・G. ウォイティツ の本。
やっぱりこの人が素晴らしいなぁ。
もともと「アダルト・チルドレン」に注目すべしと言い出した言い出しっぺなんだねぇ。やっぱりそうだったんだと思う。日本で「アダルトチルドレン」というと、どうしても齋藤学が有名で、この人の本ばかりが書店にあふれてるけど、やっぱりウォイティツだよなぁと思う。

齋藤学さんはあくまで学者の立場をくずさない人で、ウォイティツはあくまでソーシャルワーカーとして現場からのスタンスをくずさない人っていう違いでしょうね。でも本当に苦しんでる人間には、未整理な情報であっても現場からの意見の方がしっくりくると僕は思う。

で、ウォイティツの本を読んでいると、まさに、いまの僕にぴったりあてはまることが書いてありました。それは、「回復中の人が注意すべき事。」と題された数項目なのですが、そらもう、ぴったり。「そうよなぁ」とうなるしか無かった。

とくに、六項目ある「回復中の人への注意点」の中でも、この指摘にはまいった。

(引用開始)--------------------------
回復中の人が注意すべき事。
●二
他の人にこのプロセスを教えて回復させてやりたいと思うのは「もっと良い生き方がありますよ」と言っているだけではなく「あなたの全人生を逆さまに、あるいは裏返しにしなさい」と言っているのと等価だと言うことを忘れてはならない。これは他人に対する要求としては相当の物だ。
だから誰かを無知から救ってやりたいという気持ちになった時には、次のように自問することだ。
・私には、この人の回復のプロセスに最後まで付き合う覚悟があるか。
・もしこの人が変わらないことを選ぶなら、私はそれを選ぶこの人の権利を受け入れることが出来るか。
もしその自信がないなら、相手の方からやって来るまで待った方がよい。
(引用終わり)-------------------------

う〜んと唸った。そうか。そうなのか。

ACの回復のためには、回復過程であるAC同士の集まりである自助グループへの参加が効果的なんだそうだ。当然ウォイティツもそう言うグループの活動のことも良く知っているはずだから、これは想像だけれど、そういう場で「他のACに注意するAC」のことを良く見聞きしてきたということなんだと思う。そうでなければ、この「注意点」は書けないよなぁ。

そうなんだ。ACからの回復というのは、まさに、

●全人生を逆さまに、あるいは裏返しにしなさい。

と言うのと同じことなんだよねぇ。いったん「気づき」があれば「そのとおり」と思えるんだけど、その気づきが起きる前では、人格の完全否定にしか思えない、というか、まさに「自分を支えている(偽の)人格の完全否定」をしないといけなくなるのだから、そら辛いわな。

だから、

●その人の人生に最後まで付き合う覚悟
●相手が「気づかない」のも相手の権利

ということを、心にとめよ、と言っておられるわけですわ。なるほどなぁ。
この言葉の深さを実感するのは、この「注意点」の一番目が、以下のようなものだから、なおさらなのです。

(引用開始)--------------------------
回復中の人が注意すべき事。
●一
回復とは、アダルトチルドレンにとって非常に破壊的なプロセスである。それは自分が今までずっと維持してきた世界観や自己の見方をガラリと変えるからだ。
(中略)
しかし、いったん爆発した火山を元通りの円錐形に戻すことが出来ないのと同じように、あなたは回復前の状態に戻ることはできない。このことは注意しなければならない。自分が自分でないような感じがしても驚いてはいけない。そういうことは当然起こりうることなのだ。
(引用終わり)-------------------------

これ、僕にはすごく意味が良く分かるんですけど、そうでない人にはさっぱりだと思うので、簡単に説明します。
まずアダルトチルドレンにとって「回復」というのは、まさに「自己崩壊」とも言える巨大な衝撃をともなうということなんです。人によるとは思うけど、大きな意味でそういうことです。それはもう大転回ですから。とんでもないんです。まずそこがわからないと思いますね。アダルトチルドレンの人にも、もともとまともな人にも。

で、この回復基調に一度入ってしまったら、二度とACだった時の狂った状態に戻ることはありえない、ということです。だっていまの方が絶対に幸せだもの。もう、あんな苦しい精神状態に戻りたいとは思わないですよ。いまの方が圧倒的に楽しくて快適で機能的だもの。とてもじゃないけれど、もう「親の呪縛から生まれた精神状態」になんて戻りたいとは思いもしない。

で、確かに回復プロセスというのは始まりは瞬間なんだけど、終わりというものはなくて、一生かけて自分育てをしていくことそのものが回復プロセスになっていくわけです。

ですから、時間はかかるし、とにかくゆっくりとしか進まないわけですけれども、嫌な事から逃げない、人生と向き合って取っ組み合いをする、成長する、というプロセスはずっと続けることになるし、自分の人生なんだから、そこからは逃げられないし、逃げる気も出ないということですね。それがこのウォイティッツが言っていることの「自分が自分でないような感じがしても」の意味なんです。

それは「始めての体験」なので、いままでの自分からすれば「全然自分らしい感じ」はしないということですね。いやまぁ、いままで自分が知らなかったことを知っていくプロセスなのだから、それが当たり前ってことなんですが。
たとえるなら、まだなじんでない服とか靴と同じです。体にぴったりとは来ない。慣れるまで着続けるしかない。

ここまでがウォイティツの言ってることなわけです。
もう、まさにその通り、なんです。

ところが、です。

こういう具合に回復中のACのことを、いまだにアダルトチルドレンのままの人から見ると「この人は無理して変わってしまおうとしている。変だ!」というように見えてしまうわけです。そらそうですわね、新しい服に慣れようとしてるとこなんだから、なんとなくぎこちなく見えるでしょうよ。

う〜ん、でもそれはしょうがないんだよなぁ。成長するってのは新しい服を着るってことなんだし、そういうぎこちなさを体験していくってことそのものなんだから。

それが変わるってことなんだし、いつまでも変われないってことが問題なんだし、結局そういうことなんだもんなぁ。

ということで、基本として、もう身の回りのACには、できるだけ「全人生を逆さまにしなさい」と直接言うようなことはしないようにしようと思いましたね。当人が気づこうとしない限り無理なんだし。

「そんな苦しみの中で生きるようなことは、やめなよ。」って言いたいんだけどねぇ。でもそれもまた人生なんだし、しょうがないよなぁ。

ウォイティツもまた私の心の師匠のひとりなので、師匠の言葉を支えにするしかないなぁって思う。

ちなみに、ウォイティツは女性で、旦那がアルコール依存症だった人なんですね。で、子どもも産んだ人。だからこそ、アルコール依存症の親を持つ、子どもの行く末が気になって仕方なかったわけです。

この本が出た当時というのは、誰もそういう心の問題までは考えもせず「アル中さえなおせばいい」と、アル中を抱えてる家族の心のケアなんてほったらかしだったってことです。

でも違うんだよな。世代間連鎖こそが問題なんだよ。アル中の子はACになってしまって、孫がまたアル中になったりするんだ。それはアルコールが問題なんだけど、アルコールを必要とする心の問題こそが重要なんだ、ということがポイントなんだ。

アルコールだけでなく、ギャンブルも、児童虐待も嗜癖も、共依存、とくに子どもへの無意識の依存も、なんだかんだいろいろある各種依存症すべてに通じることなんだ。

「世代間連鎖を絶て!」

ようはこれがポイントなんだってことなんだけど、その微妙な違いを、最初にキチンと解き明かしたのが、この本なんでしょうね。

あんまり書店では見かけないんだけど、やっぱりこれが原典だと思うなぁ。

齋藤学さんも良いし、ブラックやらWスミスやらいろいろいてるけど、僕にはやっぱりウォイティツだ。まず、ここが原典だと思います。

ご一読あれ。

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