百歳まで歩く―正しく歩けば寿命は延びる!
■走る前に歩こう!

百歳まで歩く―正しく歩けば寿命は延びる!
ISBN:4344410459 文庫 田中 尚喜 幻冬舎 2007/11 ¥480
http://astore.amazon.co.jp/kids1226-22/detail/4344410459/249-9767057-8485143

最近は、長生きしようと決めているので、こういう本に興味が行く。この世は楽しくて素敵な場所だから、長くとどまっていたいのだ。

なんとなく買っただけなので、最初はスポーツトレーナーか何か、そういう人が書いた本なのかな? と思っておりましたが、そうではなくて著者は理学療法士さん。PTとか呼ばれたりもしますが。

理学療法士というのは、体の骨格やら筋肉やらの付き方の知識をキチンと頭に入れた上で、肉体的なリハビリテーションのサポートをされたりするようなお仕事ですね。

この理学療法士さんというのは、実は本当にすごくて、なんちゅうか体のエキスパート、という気がします。

前に付き合ってた彼女が、しょっちゅう腰が痛いという人だったので、やたらと腰をもまされていたのだけれど、一度医者に診てもらったら?という話になって、病院に行くと、お医者さんの診察はすぐに終わって、即理学療法士さんの診断に移ったのだそうです。

で、腰が痛いと言うと、「そこに立ってみてください」と姿勢のチェック。「あー、だいぶ体を反らせて立ってますね。」と体のゆがみを一発で判断。「これからしばらく腹筋の運動をしてください。」と言われ、それを一週間続けたら、見事に腰痛がなくなって、私も腰もみから解放された、という事がありました。
理学療法士さんってすごいなぁと感心してしまったのですよ。

で、いろいろ面白いなぁと思うところの多かった本なのですが、とにかく歩くという事を推奨されていて、大事なのはここだと思うのです。

(引用開始)-----------------------------
 では、歩くために使われる筋肉の数はどれくらいなのでしょう。
 歩くという行為には全身の筋肉が使われていて、歩行のときの推進力として使われる筋肉は、全身の筋肉の3分の2に当たります。全身の筋肉の数が400種類ですから、実に約260種類の筋肉が前に進むたびに使われていることに。加えて、二足歩行では体を支え、バランスを取るためにも筋肉が使われるので、歩行ほど参加する筋肉の数が多い日常動作もありません。
(引用終了)------------------------------

ということなわけです。要するに歩くという行為は筋肉を鍛えるためにとても良いわけです。
で、ここで言う鍛えるというのには、遅筋と速筋の違いという事があります。

(引用開始)-------------------------------
しかし最近では、こうした形状で筋肉を分類することはほとんどしなくなりました。トレーニングや体の動かし方を考えて筋肉を捉えることが主流になるにつれ、形状よりも性質による分類のほうが重要になってきたわけです。
瞬発力や持久力などで、筋肉を大きく2種類に分類する考え方です。筋肉の性質で瞬発力のある筋肉が「速筋(そっきん)」で、持久力がある筋肉を「遅筋(ちきん)として分けます。
(引用終了)-------------------------------

中年になったら、まずこの「遅筋」を鍛えなさいと、この田中さんはおっしゃる。

(引用開始)-------------------------------
困ったことに、中年になってスポーツジムで筋トレを始めた人に膝を痛める、腰を悪くするなどの故障が多発していますが、これはマシーンを使ったトレーニングなど速筋だけを集中的に鍛えた結果です。
(引用終了)-------------------------------

つまり持久力を支える遅筋が不足しているから故障するという話な訳です。このあたりを田中さんは「相撲」を例に出して話しておられます。

(引用開始)-------------------------------
相撲の練習では、昔からシコと鉄砲が基本です。なかでも柱に向かってゆっくり押し出す鉄砲が、遅筋を鍛えます。しかし、近年の相撲部屋では専用のトレーニングルームを設置しているところもあり、従来のシコと鉄砲を重視した練習より、トレーニングマシーンを使った練習が多く行われるようになりました。
その結果、遅筋よりも速筋がきたえられることになりました。で、最近の取り組みは瞬発力のある相撲が中心になり、持久力のある相撲が少なくなった。がっぷり組合ったまま水入りになるような、見応えのある相撲はなかなか見られないなぁ…、というのが、私の感想です。
 また、昔に比べると、力士がケガで休場することが多くなりました。このことにも、遅筋を鍛える事がおろそかになっていると、理学療法士の立場からは推測しているのですが…。繰り返しますが、すばやく力強く収縮し、柔軟性において劣る速筋、その速筋を中心に鍛えていると、ケガをしやすいのです。
 この力士の話を中高年のみなさんに置き換えても同じで、中高年も速筋中心ではなく遅筋を中心に動かすべきなのです。
(引用終了)-------------------------------

と、こうなるわけです。
このあたりは、陸上競技などで、ケガをしない体を作るための「マフェトン理論」を生み出したフィリップ・マフェトン博士の話と共通してますな。というか、田中さんは、マフェトン理論くらいは知ってるんでしょうね。

マフェトン理論については、
http://www.ne.jp/asahi/ja/asd/saitou/tore1.htm
が詳しいのです。

中年になって、筋肉が落ちてくると、ついついすぐに「スポーツジムで筋肉を鍛えなきゃ」とか思うわけですが、それはあまりに単純すぎる発想なんですね。
まず、キチンと歩くという当たり前の事をしないとダメなわけです。基礎工事を飛ばして高層建築はできないわけで、まず毎日数千歩くらいは歩かないと。
(歩き方に関しても田中さんはいろいろ書いておられます。一日一万歩って言うけどそんなに必要ないのではないか? それより姿勢をキチンとして歩くべきだとか、いろいろ。)

運動不足だと、ついつい「がんばって運動して取り返すぞ」とか思うわけですけど、その発想自体が間違ってるのですね。
そうじゃなくて、たとえば家の中で掃除や洗濯をマメにやるとか、買い物に毎日出かけるとか、そういう日常の普通の動きをたくさん増やすのが、まっさきに必要で、そういう歩くというような普通の動きで持久力が整えられて、それによって「長く体を動かしても疲れない」体の基礎ができる。それからランニングとかをすると、そういう順番があるわけですよ。運動してない人って、まず寝っ転がってテレビ見てるとか、パソコンにへばりついてるとかしかしてないので、まぁ、まずは家の中で動く、でしょうね。それから毎日歩く、でしょう。いきなりランニングじゃないよなぁ。

ものすごく基本的な話なので、引用はしませんが、筋肉というのは、拮抗筋と言って、つねに反対側に動かす筋肉がセットで存在してるそうなんですね。腹筋と背筋みたいに。で、そのバランスが崩れて、どちらかだけに頼ると体が歪んでしまって、僕の彼女みたいに、しょっちゅう腰が痛いとか言わなくてはならなくなるわけです。

これは、ようは「同じ動きばかりやってる」からいけないわけですよ。一日中運転してる仕事だとか、座って作業するだけの仕事とか。
同じ事ばっかりやってるから、筋肉バランスが崩れて変な負担がかかっておかしくなるわけです。でも、歩く動作だと使う筋肉の数が多いし、体のバランスを取るためには、それこそたくさんの筋肉をつねに連動させて動かさなければならない。だから「歩く」は体に良いわけです。

歩いてないから、走って済まそうっていうのは、だから根本的に完全に間違いな訳です。だって走る筋肉って特殊な動きですから。
歩くためには、重心を前に送り出す大臀筋やヒラメ筋を使う比率が高いのですが、これらの筋肉は遅筋の比率が高いそうです。でも走る時はハムストリングって言う遅筋の少ない筋肉ばかりをコキ使うことになるようです。

(引用開始)----------------------------
そして重心を前方に移動させることのできる筋肉には、もう一つハムストリングがありましたが、ハムストリングは大臀筋やヒラメ筋に比べると、遅筋よりも疲れる筋肉の速筋の割合が高く、歩行のスピードを上げる時や、走るときなどによく使われます。ハムストリングが使われる時は走る動作と同じで、体の前方に重心があり、膝がまがっていることなどがあります。大臀筋やヒラメ筋が体の後ろから重心を押し出すのに対し、ハムストリングは前から重心を引き寄せるのです。
(引用終了)----------------------------

だから、座り仕事しかしてない人間が「運動不足だし、走るか」とか言うのは、一番よろしくないというか、効率の悪い筋肉の鍛え方をしているとしか言えないわけですね。
まず「歩く」が先でしょ、って事です。注意しないと。

この本に書いてあったと思うのだけど(どこに書いてあったか、ちょっと見あたらない。他の本で読んだのかなぁ。)人体骨格標本とか見ていてもわかるんですが、腹回りの骨って、実は背骨しかありません。

これはどういう事かというと、人間の体は筋肉でこそ支えられているって事なんですね。で、拮抗筋の説明でもわかったように、それはバランスによって成立しているんです。すべての筋肉をおしなべて使うことによって、無理なく痛みのない、よい状態で体を支えていられるというわけです。

で、筋肉というのは、使わなければ減っていきますから、全体をまんべんなく利用するのが一番良いという事になるわけですが、そうするための一番効果的な方法が「歩く」だ、という事になるわけです。

で、てんびんばかりの釣り合っている状態なら、少しの力で傾きが生じますから、バランス良い運動に、あんまり激しい動きって必要ないって思うんですね。まぁ負荷はかけないといけないでしょうけど。で、速筋も鍛えないといけないけど。でもまぁおしなべて、全体をバランス良く使ってれば痛みもなく筋肉を保てるって事な訳です。
ちゅうことは、やっぱり歩くが一番だよなぁって思うのでありますよ。

これは、別の本で読んだのだけれど、人間の体重の7割は上半身にあるんだそうです。頭が重いですからね。だから、その重い頭のある上半身を支えるために、人間の体の筋肉の7割が下半身にあるんだと思う。
で、それらをバランス良く鍛えるには歩くのが一番だって事になるわけですよ。

とりあえず、基本的な考え方だけ紹介しましたけど、この本のいちばん面白いところは、年代別で、いろいろなエクササイズを提案してるところです。
年齢によって鍛えるべき筋肉は違ってくるんだそうです。40代になって20代のマネをしていても意味ないし、同じ動きばっかりやってても、年食ってから欠けがちになる筋肉を年齢に応じて補完してやるとかしてなければ、意味がないわけです。

なので、年齢別のエクササイズが図解入りで紹介されてるとかが、なかなか良いのであります。

ともかく、基本は歩く事ですわな。やっぱり。

そうそう、それと、WiiFitが良くできてると思ったのは、やっぱりこの本を読んだ後だったからなんですよね。あれは、体のバランスをチェックする装置の上で体を動かさせるし、トレーニングが何十種類も入っているのはとても正しい。雨でもやれるし記録はつけられるし、なかなか良いのじゃないかなと。

とまぁ、こんな事書いてますが、中年太りの場合は、運動より先に食う量を減らすことが最優先なので、そこは先にやりましょうね。運動は後でも良いのだ。
このあたりは例の「いつまでもデブと思うなよ」からの引用なんですけど、それはまた。

ともあれこの本はなかなか良かったです。

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