高校時代、化学が14点であった。
当然100点満点で、だ。

しかも、それは通常の試験ではなく、追試のテストで、だった。

追試のテストというのはどういうものかというと、ようするに中間考査とか期末試験で出た問題をそのままもう一度やり直すようなものである。

それで14点。

アホである。

本当に化学は苦手だった。
当時、追試を受けた人間はクラスでもせいぜい5人くらいだった。その中の私はひとり。3人は追試で合格して、残ったのは僕と、もうひとり。
そいつはけっこう気のいい奴で、僕の点数見て、ニタ〜っと笑って、

「お前、アホやろ」

と言ったものだった。
いや、実にアホである。どうしようもない。

で、だ。

そういう私であるので、そうそう良い成績を取ることはないのだが、それでも不思議と相性の良い科目というのはあって、倫社に関してだけは何の苦労もなくすーっと頭に教科書の内容が入るのだった。

予習復習、まったく不要。授業中に先生に内緒で小説の本を読むような人間だったから、まじめに授業も受けてなかったのだけれど、倫社だけは、小説読むより教科書の内容がおもしろかった。

で、中間テストの時に問題を解いて行くとラクラク解ける。「なんじゃこりゃ。えらい簡単やなぁ。」と思って答えを書いていったのだけど、いざテストを返してもらったら、90点という高得点。

いや、高得点なのはどうでも良かったのだ。それよりクラスのみんなの点数に驚いた。0点続出。10点台20点台もざら。まともに勉強してる奴なんて皆無に近い状態だった。

どどどど、どーゆーことやねん。

とまぁ私は思った。
思ったけど、単に倫社向きの頭を私が持っていたとしか言いようがないのである。こんなもんは個性としか言えない。どうしようもない。できてしもてんからしゃーないやん。そんなもん。である。

で。

クラスに非常に可愛らしい女の子がひとりいた。私の好みではなかったのだが、上級生の男子がわざわざ覗きに来るほどの人気者であった。
今で言うとそうやなぁ、釈由美子をもうちょっと丸顔にしたような子かなぁ。

ま、そういう子がいて、この子が実は勉強が大変できる。英語であれ、数学であれ、まぁ、たいていはクラスのトップの成績だったのである。

授業中にちょっと乱暴者の男子あたりがギャースカ騒ぐと、先生に対して、「うるさい人がいてると授業が進みません。先生、こういうのはキチンと叱ってください。」と言うような人なのであります。

チョー真面目。
あんまし近寄りたくない。

で、この彼女が同じ倫社のテストでせいぜい60点くらいだったのよなー、確か。
私がいなけりゃ、いつも通りトップなんですが。
30点もの大差をつけて私の方が点数上だったんです。

なんかねぇ、その時に睨まれたような記憶があるんだわ。その子に。うまく言えないけど、「なによそれルール違反だわ」みたいなにらまれ方をしたような気がします。

そんなこと言うたかて、しゃーないやん。わかってしもてんし。こういうの得意なんやもん、しゃーないやん。

そういう気になったのであります。

こういう努力して努力してやっと60点とかやってる人から、なんか恨まれてしまうタイプなんかも知らんなぁワシ、とか最近思う。

で、結局倫社は卒業するまでずっと私はつねにトップの成績でした。なんか学年でもトップだったらしい。化学は14点なのに。
「こんな、なぁ、入試の役にも立たん科目が成績良くてもなぁ」という気はしたんですが。

で、忘れられないのが、同じ化学の追試仲間の最後のふたりになったうちの片割れが言ったセリフ。
「倫社で90点やて? お前アホやろ。」
と、これまた気のいい笑顔で指摘しよりました。

うーん、そうかもなぁ、アホかも。
そう思うのであります。

で、いまだにやはり社会とか倫理とか、そういう項目に関する理解度やポイントつかむ力は異様に高いらしく、ついてこれない人には全然無理なのかも知れないとすら思うようになってまいりました。

で、後日談として面白いのは、いまだに倫社で得したことはなくて恨まれたりすることの方が多いような気はしてるんですが、重要なのは化学のほうで。

実は私は化学の知識の無さが幸いして、仕事がうまく回ってたりするんですな。というのは、仕事で分析計の会社のパンフレットを作ったりしてるんですが、それがもう化学ばっかし。元素記号に亀の子記号、あるいは電気やら電子やらの各種の単位。苦手なものばーっかりなんです。

でも苦手なものだという「自覚」があるから、わからないことも素直に率直に質問できるしするし、またそういう会社の人は博士号を取ってるような人もいてるから(きっとそういう人は化学90点とかなんだろうなぁ。)教え方もうまいんですな。

アホやから、そういう化学が得意な人からの教えを請うことができる。だって「知ってる」はずないねんもん14点の人やから。
素直に聞くのよね。「そこ、良くわからないです。教えてください。」って。
そらね、化学の好きな人ばっかりが集まってますからね、そらもう嬉々として教えてくれるんですよ。そらもう無茶苦茶にわかりやすかった。学校の授業っていったい何やってんというくらいのものでした。

結局、そうやって素直に聞いたおかげで、仕事はいまだに切れ目なくあるし、ありがたいことだなぁと思ってたりするわけで。

そんなこんなを考えるとね、努力して60点とかね、いちばんしょーもないなぁと。そんな風に感じてしまう。人生、そんなもんとちゃいまっせ。

もっと自分らしく、自分を生きなきゃ抜け道は広がってくれないのよと思う。

14点だから良かったんだしさぁ。
90点だから苦労するっていうのもすごくあるんだし。
(90点の部分に関しては、たぶん相当に飛びぬけて相性が良いというか、性に合ってる分野なんやろなぁと思いますなぁ。)

60点の人よ、怒るな。90点というのはおるんや。それもなんの努力もなく。こんなん、ザラにおるよ。たぶん、別に何もめずらしくはないはず。

で、倫社と化学以外はたいてい60点とか平均点の範囲内だったはずでねぇ。そういうのは多分全然人生の役には立ってないと思う。
そういうことやねん、結局、世の中って。

つくづく思うのよ、最近。
そういうことやったんやなーって。

ま、どうでもよろしけどね。

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