トヨタは自転車を作るべきだ。2。
2009年10月8日 自転車 コメント (2)
まえに、
●トヨタは自転車をつくるべきだ。
http://hitoyomi.diarynote.jp/200901130817068576/
という書き込みをしましたが、先日、
自転車会議
http://astore.amazon.co.jp/kids1226-22/detail/456977217X
という本を読みまして、よりいっそう、「トヨタは自転車を作るべきだ」と思いましたねぇ。
いや、この本に「トヨタよ自転車を作れ」とは全然書いてないんですけどね。
この本は、自転車好きの有名人の歓談というかワイワイガヤガヤしゃべってる内容で、内容としては薄いんですけど、新しい情報とか、いろんな角度からの切り口とかがあって、そういう意味ではとても面白い本でした。夕方に買ってその日の内に読んでしまった。2時間くらいで充分読めてしまう内容。
ただ、登場人物が、自転車界のご意見番、疋田智さんは当然にしても、いまや時代の寵児となった勝間和代さん、元レーサーの片山右京さん、日本人初のツールドフランス出場者今中大介さん、自民党総裁になられた谷垣禎一さんと、そうそうたるメンバーなのですね。そこがすごい。
で、この人たちは全員、自転車フリークなわけです。なので、話してる内容自体がすごい。
だから読んでると、いろいろぶっ飛んだ事が書いてあるんですよね。たとえば、
●イタリアの高速道路(スーパーストラーダ:準高速という感じのものらしい)では、自転車が走れる。
●ノルウェーでも高速を自転車が通行可能
●オランダには、どんな小さな道にも自転車用レーンが設置されている
●オランダでは自転車専用道路の長さが日本の100倍である
●当然、自転車専用レーンに駐車する車はいない
●デンマーク・フィンランドには自転車専用の早めに切り替わる信号がある
とまぁ、ほへぇ~と目を丸くするしかない話が満載です。海外の自転車事情は本当にうらやましいなぁ~と心底思いますな。
で、これが道路行政の進むべき方向だよなぁって思うわけです。まぁ基本はヨーロッパの話なんですけどね。自転車はやっぱりヨーロッパです。文化の厚みが違うわ。乗り物として、社会的に正しく評価されてるよなぁって思うわけです。
まず、ヨーロッパと日本にこれだけの差があるという事を念頭においていただいて…。
(あ、そうか、自転車がいかに「クルマの代替になりえるすぐれた交通機関であるのか」ということを、ここのページを読んでる人は知らないのですよね。ああ、そうだった。
えー世界標準のスポーツ自転車に乗れば、時速25km~35kmくらいは出せますので、大阪や東京では、地下鉄などの公共交通機関を使うより早くに出発点から到着点まで移動できます。何より早いです。最強です。一方通行は関係ないし、駐車の手間なども不要ですから市内・都内移動なら、自動車なんかほぼナンセンスなのです。雨の日以外は。人間1人が移動するだけなら、まず自転車が最強。荷物を運ぶ、複数人で移動する、などの用事がないかぎり、クルマにアドバンテージは全くありません。)
たとえば、フランスなんかでは、バスと自転車が共有する「バス・自転車専用レーン」というのがあって、このレーンには自動車は入れず、バスも速度が30km/h台で動いてるのだそうです。
都市交通においては信号が絶対に必要になりますから、40km/hを越すスピードというのは、実用上意味がないんですよ。テンポ30、ようするに30km/h台での移動で充分足りるんですね。で、専用レーンでバスが渋滞にまきこまれなくなると、時刻表どおりに発着ができて市民の足として有用になるということです。自転車も同様のスピードで安全に走れれば、かなりの数の市民がストレスなく快適に都市を移動できるということになります。
こういう事を見聞きすると、やっぱり、もっと自転車を優遇した社会にすべきだと本当に思うんですよね。クルマを否定することはしないけども、なんでもかんでもクルマを使うというのではなくて、「ひとりで移動するだけだし自転車やバスで行けばいいや」という選択肢を、きちんと作っておかないとダメだって事です。
で、自転車・バスが実用に足る、市民の足になれば、クルマにとってもかなり大きなメリットが出てくるんです。
というのは、クルマから、バス・自転車に乗り換えると、それだけで道路に空き空間が生まれるからなんですよ。
つまり、道が空いて、クルマが走りやすくなるってことです。
当然でしょ?これ。
どうしてここに、みんなが気がつかないのか。
みんなが必要以上にクルマばっかり使うから、クルマが混雑を引き起こして、不便な社会になってしまってるわけです。
だから都市交通というのは、
●クルマに不便で、自転車やバスに便利な仕組み。
にした方が圧倒的にみんなが快適だってことなんですよ。クルマに乗っている人にも快適なんです。
バスに乗ってる人が全員クルマで移動したら、車間距離まで含めて、そら、ものすご~~い面積が必要になって、道路が大混雑になってしまうに決まってます。当たり前の話です。
だから、バスや自転車はクルマの敵ではなく、非常に大切なクルマの仲間なのだと再認識していただきたいですな。(というか、もともと自転車は軽車両と言って本質的に「クルマ」なんですけども。)
クルマでも、二人以上乗ってるとか、荷物を運んでるというのなら、腹も立たないですけど、ボーっとした人間がひとりでクルマに乗ってるだけというようなのを見ると「お前、何を道路の無駄遣いしとんねん!クルマから降りろ!迷惑や!」と言いたくなってしまうんですよ。
道路は移動したいと思っている人間、みんなのものであって、「クルマのもの」ではないんですよね。
で、こういう事を、すごく、普通の人に知って欲しいよなぁと思ってるわけですけど、この本の中でこれまた面白い事が書いてあって、
●トヨタはそういう人の移動の効率について深い見識がある。
という事を片山右京さんは言うわけですよ。なんちゅうても、元レーサーですからね。ちょっと引用しましょう。
(引用開始)------------------
片山 (略)トヨタなんていうのは、そういうところにものすごい理解が深い。たとえば、奥さんが駅に旦那さんを「ヴィッツ」というちっちゃなクルマで送りますよね。あれは、人間1人を運ぶために1.3トンぐらいのものを動かすということで、エネルギー効率的には非常に矛盾している、ということを言っていますからね。
(引用終了)------------------
という事なんだそうです。
で、実は疋田智さんという方は、テレビ局で番組制作をするのが本業の方なんですけど、実は「自転車に乗ろう!」というような番組を局に提案しても、スポンサーが付かないんだそうです。
そりゃそうですね。日本で自転車に関係している会社といえば、本当に小さな会社ばかりですし、大手でもブリジストンとかタイヤが本業だったりパナソニックみたいに一部門が自転車を作ってるところばっかりで、世界的な自転車関連企業のシマノが存在してるにはしてますが、あくまで部品メーカーなので、一般に広告を打つ必然性がないわけです。だから、そういう番組が成立しなくなっちゃってるんですね。
しかも、疋田さんが言うには、テレビ番組側の、よけいな気の回し方みたいな話があるということなんです。たとえば勝間和代さんが、番組中で「こういうシーンではクルマはやめて自転車に乗ればいいじゃないですか。」とリハーサルで発言したら、プロデューサーが飛んできて「それ本番では勘弁してください。スポンサーが某クルマメーカーなんです。」と規制したりするんだそうです。
くだらない自己規制なんですよね。上記のような「自転車や公共交通機関の利用が増えれば、クルマも走りやすい」という大前提が見えてない。トヨタも、そういう事はわかっているのだ、という知識もない。
つまり、気を回しすぎの自己規制で、みんなが知るべき情報がマスコミには流れていないって事なんです。
このあたりのジレンマは、自転車乗りにはすごく大きくて、ほんとうにどこか力のある団体が、上手に政治を動かしてくれないかなぁと真剣に思ってしまうわけですよ。
で、そういう事を考えると、実はやっぱり、こういう「ゆがみ」が出てしまうのは、トヨタが自転車を作っていない、世界的に遅れた会社だからだって事にしかならないわけです。
本来は「クルマを作る会社」ではなくて「人の移動をサポートする会社」でなければいけないわけです。そういう企業文化とか社会参加意識が低いわけですね。
で、次々に新しいクルマを作っては買い換えさせるという戦略しか採ってない。
でも、ですよ、クルマだけを売るのではなくて、クルマ+自転車を売れば、+アルファがある分儲かるし、こういう不況時にも、経営的にも安定するはずなんですよ。
クルマ一台の値段はどんどん安くなっていて、高い自転車(本当に良い自転車なら一台100万円くらいラクラクでかかります。20万円とか30万円とか、けっこう普通の値段です。)自転車一台とそんなに差がなくなってしまってる。
しかもクルマは、都市部だと一台あったら、それで家族全員が移動しておしまいなわけです。でも自転車ならひとりに一台以外に選択枝はないんですよね。だから「ひとりに一台」というのがまったく無理なく成立するわけですよ。
まぁ田舎だったらひとりに一台とは言わないまでも、2台、3台買うことはよくありますけど、駐車場代やら空間やらムダも多い。だからやっぱり自転車とセットで「生活における移動ツールを総合的に提供する」という方向に企業として進化すべきだと思うんですよね。
仮に最廉価版のスポーツ自転車を5万円として、5人家族なら5×5=25万円にはなるわけですよ。良い自転車なら10万円以上も当たり前ですから、(軽くて実用に足る自転車なら、どうしてもそういう価格になります。)家族5人で50万円は確実に自動車にプラスする形で購入してもらえるわけです。
こうなってくると、自転車の販売だって、バカにはできなくなってくるでしょう。
この不況で買い換えもなかなか進まないかも知れなくても、自転車ならガソリン代・駐車場代すら不要なのだから、その有用性さえアピールできれば、けっこう買ってもらえるはずなのです。
しかも、健康にも良くて、企業イメージの向上に役立つし、エコへの貢献度も一気に高まります。プリウスどころの騒ぎではないのです。
しかも、です。
普段、クルマに乗ってる人が必要に応じて自転車に乗るようになれば、
●道路が空く
んです。
つまり回り回って、クルマの性能が上がったのと同じ結果になるわけですよ。道路なんて、そうそう作れませんからね。でも、クルマのユーザーが、必要に応じて自転車にも乗るというチョイスなら、いまからすぐにでも選べる選択肢なわけです。クルマにも大きなメリットが出てくるわけですよ。
だから、トヨタは道路空間を広くする=クルマの性能を上げるという意味においても、自転車を販売する責任があるはずだと、僕なんかは思うわけです。
トヨタが自転車を作っていないのは、「当社は世界に追いついていない、田舎者の会社でございます。」と公言しているようなものです。旦那の駅へのクルマでの送り届けのムダが分ってるなら、やっぱり自転車を作らなきゃおかしいわけです。実践ができてない。口だけ。「言うだけ番長」。いちばん卑怯だ。
で、トヨタが自転車を作れば、上記のような、勝間さんの「クルマをやめて自転車に乗ればいい」というような発言が自主規制で封殺されることもなくなるわけですし、何より、トヨタが自転車推進の番組のスポンサーに浮上してくるわけです。
そのくらいの番組スポンサーになれよ!トヨタ!世界的企業と言うなら、そのくらいやれ!
とまぁ、僕は思うのです。
ネットでググると自転車乗りからは「トヨタが自転車? そんなださいのは買わないよ、俺は。」という声が多いみたいなんですけど、大きく社会構造を考えたら、トヨタが自転車を作ってない方がよっぽどおかしいのだと僕は思いますねぇ。
だって、街なかを走っていて、国内メーカーの自転車を見ることなんて、本当にまれですから。スポーツ自転車はほとんどが輸入品。ジャイアントとかルイガノとか、トレックとか。
ブリジストンやパナソニックなんて、見つける方が難しいくらいですし。
で、欲しい自転車を注文したら、輸入の船便待ちで2~3週間またされるのが普通なわけです。
それはやっぱり、どこかちょっといびつだよなぁって思う。
それもこれも、やっぱりトヨタが自転車を作ってないのがイカンのだと思うわけです。
それに、「ああ、そうか」と思ったのが、勝間和代さんの発言にある、「女性にとっての自転車のカベはメンテナンス」という話。
自転車というのは、実にシンプルな機械のかたまりで、本当に部品のちょっとした調整で調子がずいぶんと変わるんですね。だから、多少の調整はユーザーがやるのが当然というところがあるんですが、そこが女性にはしんどいわけです。走っていて、なんか変な音がしたら、もう不安で乗ってられないとかになる。
勝間和代さんなんかは、そういう部分は完全に自転車屋さんまかせなんだそうです。苦手な事はやらない。まぁ勝間さんらしい。(笑)
でも、たぶん、世間の女性のほとんどが、やっぱりメンテナンスは苦手なはずです。
なら。
トヨタ、大チャンスじゃないですか。
トヨタのお店で自転車のメンテもできるようにしてごらんなさいよ。
お客さんがどんどん自転車の調整で来店しますよ。
その頻繁な来店こそが、次のクルマ販売の重要な販売ステップになるわけです。
プリウスを飛び越えて、そういう人たちには電気自動車も売れるはずです。
なんと言っても自転車に乗る人はエコ意識が高いんだから。それはもう、すばらしい先進ユーザーがお客さまについてくれて、精緻なる市場調査ができるようにもなるはずです。
なんかね、トヨタ祭りだのなんだの、販売店にお客を呼び込む販促とか山盛りトヨタ系列のお店はやってるわけですけど、トヨタが自転車も作ったら、それこそ毎日のようにお客さんが来ますって。
自転車のメンテナンスの技術も、基礎的な事ならひと月もあれば身に付くはずです。その程度の事なら、修理工場のスタッフだけでなく、営業社員にもおぼえさせたらいいんですよ。
そういう普段の接触の多さが、必ず次のクルマの販売につながるんだから。何の問題もない。
(ザイオン効果というのがあるんです。そこを良く考えるべきだと思う。)
だから、やっぱりトヨタは自転車を作るべきだよなぁってつくづく思う。
いやまぁトヨタだけでなく、ニッサンもホンダもなんですけどね。
でもまぁ、まずトップ企業がやらなくちゃダメなんですよ、こういう事は。
任天堂が「ゲーム市場の拡大」を目指してDSやWiiを成功させたのと同じことです。
ちゃんとやれよ!トヨタ! トップ企業なんだからって事です。
それがトップの責任やねんけどなぁ。
作ってくれ!自転車を。国産でいつもメンテやサポートがしっかりしてるような製品を!
それ、欲しいよなぁ。僕はそういう自転車なら買います。
で、こういう事が進めばね、社会的な投資とかにもつながっていくはずなんですよね。
上記の自転車専用信号機みたいなものが、どんどん必要になってくる。高速道路を自転車を走らせようという話にもなってくるかもしれない。実際、上記の「自転車会議」では、高速道路の下に自動車専用道路を作ったらどうか?というアイディアが出されていました。これは雨の多い日本では、すごく良いアイディアなんですよ。雨の日の交通渋滞の緩和に大きく役立つはずですし。
そうなると、そういうさまざまな「自転車社会実現」への投資が経済効果を高めるわけですよ。なんせ、いままでやってきてなかった事なんだから。まったく新しいニーズが、
●ドッカーン
と化け物のように大きく生まれるって事です。
しかも、最初のハードルはものすごく低い。なんせ高速を造るとかの巨大投資が必要なわけではないからです。新たな社会習慣が生まれる。で、既存の道路交通網というインフラの効率がぐっと上がるわけですよ。
これは本当にすごいですよ。新しい市場整備で、いままでにまったくなかった経済があらたに生まれて活性化していくわけです。だから、本当にトヨタは自転車を作るべきだよなぁって思う。
この本では、谷垣禎一さんが地方の活性化にも自転車を利用できるのではないか?みたいな事を言っておられて、それは可能性としてあるよなぁって思うわけです。
地方だと、大型店舗が「クルマ」用に発達して、駅前の商店街がシャッター通りになってしまっているというのが大きいわけです。
しかし、駅前というのは他の都市との接点でもあるし、自転車が走りやすい環境を整えれば、駅前に、また人が集まってくるきっかけにもなるよなぁって僕は思うのです。
先日も大阪では、道頓堀の放置自転車を一斉に撤去してたんですけど、あれなんか愚策中の愚策でしてね。
あれは撤去しても、どうせまた増えるわけです。酔っぱらって歩くのがしんどくなった不埒な奴が、自転車を盗んでチョイ乗りして乗り捨てていくから、放置自転車が増えるのであって、駐輪用のチェーンロックができる固定ポストのようなものをたくさん作れば、盗難は減るわけですよ。まず最初にやらなければいけないのは、「盗難しやすい環境」の排除で、それを実現するには固定ポストを作るのがベストでしょう。で、それは放置自転車の排除作業を何度も繰り返し行う予算より、たぶんはるかに少ない予算でできるはずです。
年に12回排除作業をしてるのなら、6回に減らして、その分固定ポストを作ればいいのです。そうすれば年々放置自転車(盗難放置車)が減っていきます。確実に。
で、シャッター通りになってしまった駅前商店街も、まずは、固定ポスト方式の駐輪場の設置からやれば良いのです。
いや、いっそ有料の自転車置き場からやったらいい。有料駐輪場は儲かる、あるいは、キチンとペイするんです。駐車場を運営している会社が言ってますから。それで充分OKですよ。駐輪場があれば、人がそこまでやってくる。そこから経済が動き出すんです。だから、まずそれをやらなきゃ。
で、そういう新しい経済の流れを作ることを念頭に、トヨタのような大企業がそれを促進していかないとアカンよなぁって思うのですよ。
いままでのような「ガソリン車の新モデルへの買い換え」ではなくて「電気自動車+家族に一人一台の高機能スポーツ自転車への買い換え」という新しい価値観創造への転換をはからないと。
そういうような事をふくめて、本当にトヨタには自転車を作って欲しいよなぁって思います。
だって、誰も損せんのやから。
トヨタも得。クルマに乗る人も得。自転車に乗る人間も得。どこに問題がありますのん?
自転車を作らないトヨタは、ようするに単なるバカということですな、やっぱし。
●トヨタは自転車をつくるべきだ。
http://hitoyomi.diarynote.jp/200901130817068576/
という書き込みをしましたが、先日、
自転車会議
http://astore.amazon.co.jp/kids1226-22/detail/456977217X
という本を読みまして、よりいっそう、「トヨタは自転車を作るべきだ」と思いましたねぇ。
いや、この本に「トヨタよ自転車を作れ」とは全然書いてないんですけどね。
この本は、自転車好きの有名人の歓談というかワイワイガヤガヤしゃべってる内容で、内容としては薄いんですけど、新しい情報とか、いろんな角度からの切り口とかがあって、そういう意味ではとても面白い本でした。夕方に買ってその日の内に読んでしまった。2時間くらいで充分読めてしまう内容。
ただ、登場人物が、自転車界のご意見番、疋田智さんは当然にしても、いまや時代の寵児となった勝間和代さん、元レーサーの片山右京さん、日本人初のツールドフランス出場者今中大介さん、自民党総裁になられた谷垣禎一さんと、そうそうたるメンバーなのですね。そこがすごい。
で、この人たちは全員、自転車フリークなわけです。なので、話してる内容自体がすごい。
だから読んでると、いろいろぶっ飛んだ事が書いてあるんですよね。たとえば、
●イタリアの高速道路(スーパーストラーダ:準高速という感じのものらしい)では、自転車が走れる。
●ノルウェーでも高速を自転車が通行可能
●オランダには、どんな小さな道にも自転車用レーンが設置されている
●オランダでは自転車専用道路の長さが日本の100倍である
●当然、自転車専用レーンに駐車する車はいない
●デンマーク・フィンランドには自転車専用の早めに切り替わる信号がある
とまぁ、ほへぇ~と目を丸くするしかない話が満載です。海外の自転車事情は本当にうらやましいなぁ~と心底思いますな。
で、これが道路行政の進むべき方向だよなぁって思うわけです。まぁ基本はヨーロッパの話なんですけどね。自転車はやっぱりヨーロッパです。文化の厚みが違うわ。乗り物として、社会的に正しく評価されてるよなぁって思うわけです。
まず、ヨーロッパと日本にこれだけの差があるという事を念頭においていただいて…。
(あ、そうか、自転車がいかに「クルマの代替になりえるすぐれた交通機関であるのか」ということを、ここのページを読んでる人は知らないのですよね。ああ、そうだった。
えー世界標準のスポーツ自転車に乗れば、時速25km~35kmくらいは出せますので、大阪や東京では、地下鉄などの公共交通機関を使うより早くに出発点から到着点まで移動できます。何より早いです。最強です。一方通行は関係ないし、駐車の手間なども不要ですから市内・都内移動なら、自動車なんかほぼナンセンスなのです。雨の日以外は。人間1人が移動するだけなら、まず自転車が最強。荷物を運ぶ、複数人で移動する、などの用事がないかぎり、クルマにアドバンテージは全くありません。)
たとえば、フランスなんかでは、バスと自転車が共有する「バス・自転車専用レーン」というのがあって、このレーンには自動車は入れず、バスも速度が30km/h台で動いてるのだそうです。
都市交通においては信号が絶対に必要になりますから、40km/hを越すスピードというのは、実用上意味がないんですよ。テンポ30、ようするに30km/h台での移動で充分足りるんですね。で、専用レーンでバスが渋滞にまきこまれなくなると、時刻表どおりに発着ができて市民の足として有用になるということです。自転車も同様のスピードで安全に走れれば、かなりの数の市民がストレスなく快適に都市を移動できるということになります。
こういう事を見聞きすると、やっぱり、もっと自転車を優遇した社会にすべきだと本当に思うんですよね。クルマを否定することはしないけども、なんでもかんでもクルマを使うというのではなくて、「ひとりで移動するだけだし自転車やバスで行けばいいや」という選択肢を、きちんと作っておかないとダメだって事です。
で、自転車・バスが実用に足る、市民の足になれば、クルマにとってもかなり大きなメリットが出てくるんです。
というのは、クルマから、バス・自転車に乗り換えると、それだけで道路に空き空間が生まれるからなんですよ。
つまり、道が空いて、クルマが走りやすくなるってことです。
当然でしょ?これ。
どうしてここに、みんなが気がつかないのか。
みんなが必要以上にクルマばっかり使うから、クルマが混雑を引き起こして、不便な社会になってしまってるわけです。
だから都市交通というのは、
●クルマに不便で、自転車やバスに便利な仕組み。
にした方が圧倒的にみんなが快適だってことなんですよ。クルマに乗っている人にも快適なんです。
バスに乗ってる人が全員クルマで移動したら、車間距離まで含めて、そら、ものすご~~い面積が必要になって、道路が大混雑になってしまうに決まってます。当たり前の話です。
だから、バスや自転車はクルマの敵ではなく、非常に大切なクルマの仲間なのだと再認識していただきたいですな。(というか、もともと自転車は軽車両と言って本質的に「クルマ」なんですけども。)
クルマでも、二人以上乗ってるとか、荷物を運んでるというのなら、腹も立たないですけど、ボーっとした人間がひとりでクルマに乗ってるだけというようなのを見ると「お前、何を道路の無駄遣いしとんねん!クルマから降りろ!迷惑や!」と言いたくなってしまうんですよ。
道路は移動したいと思っている人間、みんなのものであって、「クルマのもの」ではないんですよね。
で、こういう事を、すごく、普通の人に知って欲しいよなぁと思ってるわけですけど、この本の中でこれまた面白い事が書いてあって、
●トヨタはそういう人の移動の効率について深い見識がある。
という事を片山右京さんは言うわけですよ。なんちゅうても、元レーサーですからね。ちょっと引用しましょう。
(引用開始)------------------
片山 (略)トヨタなんていうのは、そういうところにものすごい理解が深い。たとえば、奥さんが駅に旦那さんを「ヴィッツ」というちっちゃなクルマで送りますよね。あれは、人間1人を運ぶために1.3トンぐらいのものを動かすということで、エネルギー効率的には非常に矛盾している、ということを言っていますからね。
(引用終了)------------------
という事なんだそうです。
で、実は疋田智さんという方は、テレビ局で番組制作をするのが本業の方なんですけど、実は「自転車に乗ろう!」というような番組を局に提案しても、スポンサーが付かないんだそうです。
そりゃそうですね。日本で自転車に関係している会社といえば、本当に小さな会社ばかりですし、大手でもブリジストンとかタイヤが本業だったりパナソニックみたいに一部門が自転車を作ってるところばっかりで、世界的な自転車関連企業のシマノが存在してるにはしてますが、あくまで部品メーカーなので、一般に広告を打つ必然性がないわけです。だから、そういう番組が成立しなくなっちゃってるんですね。
しかも、疋田さんが言うには、テレビ番組側の、よけいな気の回し方みたいな話があるということなんです。たとえば勝間和代さんが、番組中で「こういうシーンではクルマはやめて自転車に乗ればいいじゃないですか。」とリハーサルで発言したら、プロデューサーが飛んできて「それ本番では勘弁してください。スポンサーが某クルマメーカーなんです。」と規制したりするんだそうです。
くだらない自己規制なんですよね。上記のような「自転車や公共交通機関の利用が増えれば、クルマも走りやすい」という大前提が見えてない。トヨタも、そういう事はわかっているのだ、という知識もない。
つまり、気を回しすぎの自己規制で、みんなが知るべき情報がマスコミには流れていないって事なんです。
このあたりのジレンマは、自転車乗りにはすごく大きくて、ほんとうにどこか力のある団体が、上手に政治を動かしてくれないかなぁと真剣に思ってしまうわけですよ。
で、そういう事を考えると、実はやっぱり、こういう「ゆがみ」が出てしまうのは、トヨタが自転車を作っていない、世界的に遅れた会社だからだって事にしかならないわけです。
本来は「クルマを作る会社」ではなくて「人の移動をサポートする会社」でなければいけないわけです。そういう企業文化とか社会参加意識が低いわけですね。
で、次々に新しいクルマを作っては買い換えさせるという戦略しか採ってない。
でも、ですよ、クルマだけを売るのではなくて、クルマ+自転車を売れば、+アルファがある分儲かるし、こういう不況時にも、経営的にも安定するはずなんですよ。
クルマ一台の値段はどんどん安くなっていて、高い自転車(本当に良い自転車なら一台100万円くらいラクラクでかかります。20万円とか30万円とか、けっこう普通の値段です。)自転車一台とそんなに差がなくなってしまってる。
しかもクルマは、都市部だと一台あったら、それで家族全員が移動しておしまいなわけです。でも自転車ならひとりに一台以外に選択枝はないんですよね。だから「ひとりに一台」というのがまったく無理なく成立するわけですよ。
まぁ田舎だったらひとりに一台とは言わないまでも、2台、3台買うことはよくありますけど、駐車場代やら空間やらムダも多い。だからやっぱり自転車とセットで「生活における移動ツールを総合的に提供する」という方向に企業として進化すべきだと思うんですよね。
仮に最廉価版のスポーツ自転車を5万円として、5人家族なら5×5=25万円にはなるわけですよ。良い自転車なら10万円以上も当たり前ですから、(軽くて実用に足る自転車なら、どうしてもそういう価格になります。)家族5人で50万円は確実に自動車にプラスする形で購入してもらえるわけです。
こうなってくると、自転車の販売だって、バカにはできなくなってくるでしょう。
この不況で買い換えもなかなか進まないかも知れなくても、自転車ならガソリン代・駐車場代すら不要なのだから、その有用性さえアピールできれば、けっこう買ってもらえるはずなのです。
しかも、健康にも良くて、企業イメージの向上に役立つし、エコへの貢献度も一気に高まります。プリウスどころの騒ぎではないのです。
しかも、です。
普段、クルマに乗ってる人が必要に応じて自転車に乗るようになれば、
●道路が空く
んです。
つまり回り回って、クルマの性能が上がったのと同じ結果になるわけですよ。道路なんて、そうそう作れませんからね。でも、クルマのユーザーが、必要に応じて自転車にも乗るというチョイスなら、いまからすぐにでも選べる選択肢なわけです。クルマにも大きなメリットが出てくるわけですよ。
だから、トヨタは道路空間を広くする=クルマの性能を上げるという意味においても、自転車を販売する責任があるはずだと、僕なんかは思うわけです。
トヨタが自転車を作っていないのは、「当社は世界に追いついていない、田舎者の会社でございます。」と公言しているようなものです。旦那の駅へのクルマでの送り届けのムダが分ってるなら、やっぱり自転車を作らなきゃおかしいわけです。実践ができてない。口だけ。「言うだけ番長」。いちばん卑怯だ。
で、トヨタが自転車を作れば、上記のような、勝間さんの「クルマをやめて自転車に乗ればいい」というような発言が自主規制で封殺されることもなくなるわけですし、何より、トヨタが自転車推進の番組のスポンサーに浮上してくるわけです。
そのくらいの番組スポンサーになれよ!トヨタ!世界的企業と言うなら、そのくらいやれ!
とまぁ、僕は思うのです。
ネットでググると自転車乗りからは「トヨタが自転車? そんなださいのは買わないよ、俺は。」という声が多いみたいなんですけど、大きく社会構造を考えたら、トヨタが自転車を作ってない方がよっぽどおかしいのだと僕は思いますねぇ。
だって、街なかを走っていて、国内メーカーの自転車を見ることなんて、本当にまれですから。スポーツ自転車はほとんどが輸入品。ジャイアントとかルイガノとか、トレックとか。
ブリジストンやパナソニックなんて、見つける方が難しいくらいですし。
で、欲しい自転車を注文したら、輸入の船便待ちで2~3週間またされるのが普通なわけです。
それはやっぱり、どこかちょっといびつだよなぁって思う。
それもこれも、やっぱりトヨタが自転車を作ってないのがイカンのだと思うわけです。
それに、「ああ、そうか」と思ったのが、勝間和代さんの発言にある、「女性にとっての自転車のカベはメンテナンス」という話。
自転車というのは、実にシンプルな機械のかたまりで、本当に部品のちょっとした調整で調子がずいぶんと変わるんですね。だから、多少の調整はユーザーがやるのが当然というところがあるんですが、そこが女性にはしんどいわけです。走っていて、なんか変な音がしたら、もう不安で乗ってられないとかになる。
勝間和代さんなんかは、そういう部分は完全に自転車屋さんまかせなんだそうです。苦手な事はやらない。まぁ勝間さんらしい。(笑)
でも、たぶん、世間の女性のほとんどが、やっぱりメンテナンスは苦手なはずです。
なら。
トヨタ、大チャンスじゃないですか。
トヨタのお店で自転車のメンテもできるようにしてごらんなさいよ。
お客さんがどんどん自転車の調整で来店しますよ。
その頻繁な来店こそが、次のクルマ販売の重要な販売ステップになるわけです。
プリウスを飛び越えて、そういう人たちには電気自動車も売れるはずです。
なんと言っても自転車に乗る人はエコ意識が高いんだから。それはもう、すばらしい先進ユーザーがお客さまについてくれて、精緻なる市場調査ができるようにもなるはずです。
なんかね、トヨタ祭りだのなんだの、販売店にお客を呼び込む販促とか山盛りトヨタ系列のお店はやってるわけですけど、トヨタが自転車も作ったら、それこそ毎日のようにお客さんが来ますって。
自転車のメンテナンスの技術も、基礎的な事ならひと月もあれば身に付くはずです。その程度の事なら、修理工場のスタッフだけでなく、営業社員にもおぼえさせたらいいんですよ。
そういう普段の接触の多さが、必ず次のクルマの販売につながるんだから。何の問題もない。
(ザイオン効果というのがあるんです。そこを良く考えるべきだと思う。)
だから、やっぱりトヨタは自転車を作るべきだよなぁってつくづく思う。
いやまぁトヨタだけでなく、ニッサンもホンダもなんですけどね。
でもまぁ、まずトップ企業がやらなくちゃダメなんですよ、こういう事は。
任天堂が「ゲーム市場の拡大」を目指してDSやWiiを成功させたのと同じことです。
ちゃんとやれよ!トヨタ! トップ企業なんだからって事です。
それがトップの責任やねんけどなぁ。
作ってくれ!自転車を。国産でいつもメンテやサポートがしっかりしてるような製品を!
それ、欲しいよなぁ。僕はそういう自転車なら買います。
で、こういう事が進めばね、社会的な投資とかにもつながっていくはずなんですよね。
上記の自転車専用信号機みたいなものが、どんどん必要になってくる。高速道路を自転車を走らせようという話にもなってくるかもしれない。実際、上記の「自転車会議」では、高速道路の下に自動車専用道路を作ったらどうか?というアイディアが出されていました。これは雨の多い日本では、すごく良いアイディアなんですよ。雨の日の交通渋滞の緩和に大きく役立つはずですし。
そうなると、そういうさまざまな「自転車社会実現」への投資が経済効果を高めるわけですよ。なんせ、いままでやってきてなかった事なんだから。まったく新しいニーズが、
●ドッカーン
と化け物のように大きく生まれるって事です。
しかも、最初のハードルはものすごく低い。なんせ高速を造るとかの巨大投資が必要なわけではないからです。新たな社会習慣が生まれる。で、既存の道路交通網というインフラの効率がぐっと上がるわけですよ。
これは本当にすごいですよ。新しい市場整備で、いままでにまったくなかった経済があらたに生まれて活性化していくわけです。だから、本当にトヨタは自転車を作るべきだよなぁって思う。
この本では、谷垣禎一さんが地方の活性化にも自転車を利用できるのではないか?みたいな事を言っておられて、それは可能性としてあるよなぁって思うわけです。
地方だと、大型店舗が「クルマ」用に発達して、駅前の商店街がシャッター通りになってしまっているというのが大きいわけです。
しかし、駅前というのは他の都市との接点でもあるし、自転車が走りやすい環境を整えれば、駅前に、また人が集まってくるきっかけにもなるよなぁって僕は思うのです。
先日も大阪では、道頓堀の放置自転車を一斉に撤去してたんですけど、あれなんか愚策中の愚策でしてね。
あれは撤去しても、どうせまた増えるわけです。酔っぱらって歩くのがしんどくなった不埒な奴が、自転車を盗んでチョイ乗りして乗り捨てていくから、放置自転車が増えるのであって、駐輪用のチェーンロックができる固定ポストのようなものをたくさん作れば、盗難は減るわけですよ。まず最初にやらなければいけないのは、「盗難しやすい環境」の排除で、それを実現するには固定ポストを作るのがベストでしょう。で、それは放置自転車の排除作業を何度も繰り返し行う予算より、たぶんはるかに少ない予算でできるはずです。
年に12回排除作業をしてるのなら、6回に減らして、その分固定ポストを作ればいいのです。そうすれば年々放置自転車(盗難放置車)が減っていきます。確実に。
で、シャッター通りになってしまった駅前商店街も、まずは、固定ポスト方式の駐輪場の設置からやれば良いのです。
いや、いっそ有料の自転車置き場からやったらいい。有料駐輪場は儲かる、あるいは、キチンとペイするんです。駐車場を運営している会社が言ってますから。それで充分OKですよ。駐輪場があれば、人がそこまでやってくる。そこから経済が動き出すんです。だから、まずそれをやらなきゃ。
で、そういう新しい経済の流れを作ることを念頭に、トヨタのような大企業がそれを促進していかないとアカンよなぁって思うのですよ。
いままでのような「ガソリン車の新モデルへの買い換え」ではなくて「電気自動車+家族に一人一台の高機能スポーツ自転車への買い換え」という新しい価値観創造への転換をはからないと。
そういうような事をふくめて、本当にトヨタには自転車を作って欲しいよなぁって思います。
だって、誰も損せんのやから。
トヨタも得。クルマに乗る人も得。自転車に乗る人間も得。どこに問題がありますのん?
自転車を作らないトヨタは、ようするに単なるバカということですな、やっぱし。