エコほど怪しい主張はない。
偽善エコロジー―「環境生活」が地球を破壊する (幻冬舎新書 (た-5-1))
By 武田 邦彦
http://astore.amazon.co.jp/kids1226-22/detail/4344980808/503-1393334-5299133

いやー、もうね、みなさん、この本はぜひとも読んでください。
アホらしいてエコなんてやってられませんわ、ちゅう話ですから。

著者は「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」の武田邦彦さん。「なぜウソが」より、こっちの本の方が、いろいろな問題が整理して書かれているので分りやすいし、納得もしやすいです。

本の構成としては、

(1)世に言われる「環境に良い」とする行動
→検証:良いか悪いかの判定
(2)その細目解説

という構造になっていまして、

●レジ袋を使わない→ただのエゴ
●割り箸を使わずマイ箸を持つ→ただのエゴ
●ペットボトルより水道水を飲む→悩ましい
●ハウス野菜・養殖魚を買わない→ただのエゴ
●石油をやめバイオエタノールに→ただのエゴ
●温暖化はCO2削減努力で防げる→防げない
●冷房28℃の設定で温暖化防止→意味なし
●温暖化で世界は水浸しになる→ならない
●ダイオキシンは有害だ→危なくない
●狂牛病は恐ろしい→危なくない
●生ゴミを堆肥にする→危ない
●プラスチックをリサイクル→危ない
●洗剤より石鹸をつかう→よくない
●無毒・無菌が安全→危ない
●古紙のリサイクル→よくない
●牛乳パックのリサイクル→意味なし
●ペットボトルのリサイクル→よくない
●アルミ缶のリサイクル→地球に優しい
●空き瓶のリサイクル→よくない
●食品トレイのリサイクル→よくない
●ゴミの分別→意味なし

と、これだけの項目を検証した上でダメの判定を出してます。
まえに、「バカの壁」がダメダメの本だという話を書きましたが、あの本の中で養老孟司氏は「官僚が科学的検証もせずに温暖化対策のためにCO2削減と言うのはおかしい。まず、科学的に確かめてから動け」みたいな事を言ってたんですよね。で、僕はそれを読んで「アホか、こいつは。それを科学的な数値で『それは間違っている』と判定するのが科学者の役目やんけ。そういう事を言いたいなら自分で数字や論文を出せ。官僚は政治的に決定したことしか出けへんのや。そういう役割違いの事を言うな。」と思ったわけです。

でも、この武田邦彦さんは違いますね。ちゃんと自分で数字を調べてきて、「これがこの数字で、こういう分布になるのだから、意味はない。」という事をキチンとやってます。これこそ科学者です。自分のやるべき事をやっている。正しい。そういう意味で、まず大きなところで信用できる人です。

ただまぁ、ちょっと個人的主張も入ってる感じはありますけどね。でもおおむね正しい。

それと、環境問題に関しては「地球の温暖化は悪いことではない」とする派の人もいますが、武田邦彦さんは、そこのところまではあんまり調べてない感じですなぁ。「温暖化するのはよろしくないが」という立場に立っておられる。

あと、その主張自体が本当に正当なのかどうかが不明なIPCC(気候変動に関する政府間パネル:Intergovernmental Panel on Climate Change) も無条件に信用してる節がありますね、武田邦彦さんは。でもまぁ、そのあたりは小さな問題か。

武田邦彦さんは、どうやらもともとの専門分野が資源材料工学でありますから、レジ袋の削減に関する記述なんか、もう実に見事です。
引用すると長くなるので、要約しますと、もともと石油はそのままの成分で燃やして活用していたと。で、それでは煙もすごいからと成分を分けて使うようになったと。で、省いた素材は焼却処分していたのだそうです。

しかし、それがムダだから、何か活用方法はないのか? という事で、あのレジ袋が生まれたんだそうです。だから発電したり、プラスチック製品を作ったり、車を走らせてる限りは必然的にその「余り」が出るわけですから、上手に活用すれば良い、という事にしかならないわけです。

つまり豆腐とオカラの関係なわけですから、豆腐の消費量を減らさなければ、オカラの削減はできまへんって事なわけです。

それをどういうことか、どこでも「レジ袋不要運動」とかやって環境に良いとか言ってるわけですな。ものすごく無意味です。いくらレジ袋を使うのをやめても、石油活用の程度が変わらないのなら、同じだけの「あまり」が出ますからな。
で、結局、モノを買うという事は、必然的に「捨てる」と言うこともするわけで、レジ袋は家庭内のゴミ箱用ゴミ袋、ゴミ出し用ゴミ袋として活用されます。必要なものは必要だから、結局それはお金を出して買うわけで、得をするのはスーパーだけです。いままで無料で配ってた袋を有料で売り、しかもエコバッグとかいうおかしなものまで売りつけられる。ものすごく得です。実にあほくさい。

しかも!ですよ。焼却する際に高温で焼かないと一酸化炭素とか良くないガスが出るわけですが、そのためには水分を含んだ生ゴミを燃やすのは効率悪いわけです。そう言うときに、レジ袋にくるまっていたらより効率的に燃えるのですな。

いまは、高性能焼却炉の技術がすごく発達していて、家庭用のゴミを全部まとめて焼却しても、
●二酸化炭素と水の気体
●灰(飛び灰:水銀・鉛・カドミウム・ヒ素)
●スラグ(土の成分)
●メタル(銅・鉄など)
の4つの成分にキチンと分かれるそうです。

下手なリサイクルとかをするより、こうした廃棄物は燃やした方が管理も的確で安全だそうです。家庭用生ゴミをリサイクルして、堆肥にして、変な毒性の物質がたくさん土壌に蓄積する方が怖い、家電リサイクルもその法の隙間をついて、中古品が処分能力もない海外に流れてしまっては、そっちの方が問題と武田邦彦さんはおっしゃる。

こういう法規制というのは、官僚が「政治(一般大衆の支持)」で決めてるところが大きくて、ダイオキシンだって、別にさほど危ないわけでもないのに「危険をあおる」のが好きなマスコミが騒いだせいで規制する法律が出来てしまったという事な訳です。

まぁ、そういう規制があると、それで企業も儲かる部分がありますからなぁ。持ちつ持たれつって事になるのかも知れませんが。

ともあれ、前から僕が書いてたように、「環境問題は政治問題」であるという事を、科学者の立場から「それはおかしい」と明確にしてくれている、という点で、この本は実によろしいのであります。

世間で「常識」が生まれてる時に、「ちょっと待て。そんなおかしな『常識』はなかろう」と警告を出すのは素晴らしいと思います。人間って回りに流されやすいですからね。

この本、後半数十頁は、武田邦彦さんの、地球規模を見据えた哲学というか考え方をまとめた論文というかエッセイになっていて、その一節に、

●心が満足していれば、物を買わなくても、充実した毎日が送れる。

という結論が書いてあって、「ああ、素晴らしい!」と思うのでありますよ。

これは、なかなかに良いから、ちょっと引用しましょう。

(引用開始)-------------------------------------------
「ところで、先生は結局どうしたらよいと思いますか?」と、環境の講演をするとよく聞かれます。そんなとき、私は、
「好きな人がいれば、1杯のコーヒーでも夢のような2時間を過ごすことができる。もし好きな人がいなければ、電気街に行ってパソコンを山ほど買い、一人で家にこもるしかない。」
と答える事にしています。
要は、心が満足すれば人間はそれほど多くの物を必要としませんが、心が貧弱であれば何とかして心の隙間を物で埋めようとします。物が増えるというのは、(略)現代社会が人間的ではなく、生きがいを見つけにくく、心が満足しないことが原因していると私は感じています。
(中略)
リユースする、リサイクルするというのは、目の前にある物が気になって仕方ないからです。新しい物を買いたい、でも何となく環境も気になる、それならリサイクルをすると言えば、心が軽くなるから新しい物を買うことができる…そういう心の動きになるのです。
(引用終了)-------------------------------------------

という話。

まさにこれだなぁって思うのです。物を買うから捨てなければならなくなるわけです。できるだけ買わないようにすればいいんです。
前に携帯の電池が悪くなって買い換えたんですが、そういう時って前の古い携帯はそのまま手元に残るんですよね。「キカイ」として、「モノ」としては手元に残る。
これが私は、なかなか捨てられない人でねぇ。だから、できるだけ新しいキカイは買わないように、買わないようにしてるんです。テレビだっていまだにブラウン管式の小さなものしか持ってません。それで充分だし。十分だよテレビなんか。アホと貧乏人が見る道具でしかないって思ってるし。(賢い使い方・見方はあるんでしょうけど。)

そんなこんなを考えると、日本人の6割がアダルトチルドレンだとか言われてるし、みんな「モノ依存」してるのかもなぁ、とかも思います。
エコを言う前に、まずモノを買わない。で、モノを買う前に自分の心をキチンと覗く。そして、まず「自分」を大切にして、精神的満足感を得る。これが大事でしょうねぇ。本当にそう思いますですよ。

ま、そういう事まで考えさせられる良書でありました。おすすめです。

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