怒涛の入院体験記(3)

2001年5月28日
さて、月曜日の日記なのに内容は土曜日の話。

最初は救急用の病室に入ったけれど、途中で正規の病室に移された。内科かな?

救急用の病室では、隣に若い人が寝てて、酸素吸入されつつ、点滴までされてて、なんとも悲惨だったのであります。実に救急。聞くともなく聞いてるとどうやら気胸らしい。しかも、熊本かどこかから出てきて大阪で一人暮らしで会社づとめという話。大変やなぁ、心細いやろなぁとつくづく思う。ついひと月くらい前まで僕もひとり暮らしだったから、他人事ではないし、知り合いにも九州から出てきて一人で仕事してる人間とかもいてるから、なおさらそう感じた。

こっちはいちおう弟も来てくれてるし、ベッドに入った途端に「周りには医者も看護婦もおる、最上の環境や。ああ安心。」と思ってホッとした安心感で満たされているというのに、そのすぐ隣にいてる人が、こういう状態なわけです。うまく言えないけれど紙一重というかなんと言うかだなぁと。

横にいた弟に、「これもまぁ、休めっちゅうこっちゃ。休まないかんわな。」と言うと、「ほら、それがすでに間違ってるねん。『休まないかん』やなくて『休みたい』やろうが。体が休みたがってるのに、それがわからんようになってるのがマズイんやから。」と言われて、「うむ、まさにその通り。」と思ったりしていたわけで。一人暮らしだと、そういうことに気付くのが不得手になったりするのよね、結局。

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さて、正規の病室に移されると、こっちは風景としては救急用の病室とは違って、えらくアットホーム。老夫婦のだんなさんが入院していて、奥さんが付き添いでリンゴをむいてたり、新しい入院患者だということで、「まぁこれでもどうぞ」とお菓子を手渡してくれる人がいたり。

そんなこんなで、気分も「救急」から「安静」になった。ドタバタと入院用の下着とかも母親から届き、母親も弟も「これで一安心」と帰っていったわけです。

自分でも「家にいてると、つい仕事したりしてるもんなぁ。病院に入ったら、パソコンも持ってきてないし、メールも書かれへん。強制的休養という奴で、これはこれで強力な<養生>にはなるよなぁ。容態が急変しても、手術でもなんでもすぐに対応できるわけやし、うーむ入院ってのはなかなかに優れたシステムやねぇ。」と思ったりしてたわけです。

だが、しかし。

現実っちゅうもんは、そんな甘いものではなかったのでありました。

実は同室の入院患者さんたち、これ、ほとんどがガン患者さんでした。考えたら大きな病院の内蔵疾患専門の病室にいるのだから当然なのだけれど、2回3回と手術していて、「1回入院したらいつも何ヶ月と時間がたってる」とか言ってる人ばかり。

一度ガンを切って、再発して、そこを放射線治療で焼いたら、こんどは皮膚がただれてきたので、皮膚移植の形成手術をするとか、えらくガラガラ声の人だなと思ったら、抗がん剤とか放射線治療の副作用だったとか、そんなんばっかし。

どっしぇ〜!
すんまへん、十二指腸潰瘍程度で入院して。という感じ。

コソ泥で捕まって、大部屋にほおりこまれたら、部屋の主が完全犯罪の一歩手前で捕まった、伝説の銀行強盗の大親分だったというような状態になってしまっていて、肩身の狭いことはなはだしい状態だったのでありました。

「いや〜、ガンと聞いた時は、もうアカンとか思って、覚悟もしたけど、最近は医学の進歩でなかなか死なせてくれませんな。」とか平気で言うてる。いやね、そら確かにそうなんかも知れませんけどね、横で聞いてる私ゃ笑って聞いて良いのかどうか判断に迷いますって。そうでなくてもストレスは潰瘍に悪いっていうのに、こんなところにいたら、なおさらストレスたまるぅぅぅ〜!! たーすけて〜! であります。

まさか、こういう人たちの前で「いやぁ十二指腸潰瘍でして、明日退院です。」とか気楽に言えるほど、私ゃ肝っ玉据わってないです。会話のネタすらない。はやくお家に帰りたいよ〜であります。まさに針のむしろ。

それに、回りの話を聞いてると、大病はやはり家族その他を不幸にするというのがリアルにわかってしまう。

僕の隣で寝てた人など、奥さんが乳がんで入院し、それを看病していたが、疲れて旦那さんも入院、結局娘さんが看病していたけれど、けっこう長引き、奥さんが亡くなった後は、その娘さんが看病疲れからうつ病になったことがわかって治療、そうこうしているうちに、その旦那さんも舌ガンが発見されたので早めに手術をすることになったとかで、もうたてつづけなわけです。何かに取り付かれたように、家族みんなが病気になってるような人で、程度の差こそあれ、入院してる人はみんなそういう「悪い方に転がっている」人ばっかりなわけです。

そういうことがわかってからは、「うげー!!やめてくれぇ、不幸がうつるぅ〜〜! はやくここから出してくれぇ」という思いで満杯になってしまったというワガママさ。

「ガン、ガンって言ってるけど、なんでガンになるのかはいまひとつわかってない部分もあるやんけ。もしかしたら細菌による感染かもしらんやんけ。そう考えたら、病院にいてること自体が怖いわい。」と。あー、ワガママ。ほんまにワガママ。自分が無事とわかった途端にこれです。

で、退院してから十二指腸潰瘍について調べてみると、実際、十二指腸潰瘍ってヘリコバクター・ピロリ菌という菌による感染が基本的な胃・十二指腸内壁のただれ等を作っているというような話があって、ウゲー、やっぱりか!とか思うのであります。

くわしくはリンクをごらんあれ。


病院になんか入らないのが一番。健康なのがなにより。もっともっと気をつけなければと思いましたねぇ。

ちなみに、追跡調査をすると、胃潰瘍・十二指腸潰瘍になった人は、その後けっこう長生きするんだそうです。

んー、なんかわかるような気がする。どうせ入院するなら、潰瘍程度でサッと入ってサッと出て「病気嫌い〜〜!!!」という人間になるのが一番のような気がする。

ここのところ自宅も事務所も引越しして、環境も激変したし、精神的にもまいってたのでしょうが、これでどこの病院が安心かとか、そういうこともわかったし、健康体制もバッチリになったということにしておこう。うむ。

そんなこんなの入院体験記でありました。
では。

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