最近読んだ本。

2011年9月16日
最近読んだ本。
最近読んだ本。
最近読んだ本。
どれも大変面白かったです。

●日本再占領 ―「消えた統治能力」と「第三の敗戦」―
By 中田 安彦
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●経済と国家がわかる 国民の教養 三橋 貴明
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●聖書を語る―宗教は震災後の日本を救えるか By 佐藤 優, 中村 うさぎ
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引越しがまだまだ終わらず、いろいろと忙しいし落ち着かないのですが、それでも読書をやめてはダメなので、コツコツと読んでおりまして、しかし、逆に忙しい時の方が、本当に読みたくて意義深い本を読むのかもしれません。紹介した三冊とも大変「あたり」で、興味深く読めました。

手短に感想など。

●日本再占領
副島隆彦さんのお弟子さん中田安彦さんの著書。ある意味、師匠を超えたとも言える力作ですね。これを読めば、いまの日本の政治に疑問を持っている人でも、疑問が氷解するのではないか?と思います。

日本人が日本の政治を解読するのではなくて、ウィキリークスによって暴露された公電をもとに、いかに日本という国が日米の「官僚事務方同盟」によって汚く操られているかが、具体的な公電という証拠とともに語られていて、それだけでもかなり画期的です。

しかし、それに加えて、日本と欧米の間にある思想の断絶、考え方の違い、発想の根本の違いというところにまで踏み込んで解析されているところが中田安彦さんの面目躍如というところ。

日本の「改革」には、すぐに「明治維新以来」という枕詞がつくけれど、本当は律令制度の頃から官僚支配の構造は変わっていないのであって、維新からの100年程度の改革ではなく、律令制度1300年レベルの改革を考えないといけない、という主張が、あらゆる具体的な事例を証拠にして展開されているのが圧巻。「ああ、そうだよなぁ。」と思うことしきり。

でもなぁ。1300年レベルの改革ってのは、日本の国民、ひとりひとりが、本当にキチンと欧米の一般人並に個人として目覚めないと達成できないですからなぁ。
キチンと勉強もしない、アホが多い日本で、それが可能かどうか、かなり暗い気持ちになります。

●国民の教養
三橋貴明さんの本は、考えてみたら読むのはこれがはじめて。主張などはつねに「まぁ当然の事を言ってるな。」と横目で見ていたのですが。
で、内容は、おなじく、ごくごく普通。当たり前の事しか書いてないし、その意味では退屈でした。

でも、いまの日本では、学問的にまともな事を言おうとすると変人扱いされかねない「情報の歪み」(三橋貴明的表現)がありますから、そこを、ごくごく一般の人にもわかりやすく、数字やグラフを使って「いやいや、だからね。」とわかりやすく解説しているところが親切でよろしい。

アマゾンの解説文が、その「情報の歪み」の修正項目をわかりやすく書いてくれてるので、引用します。

(引用開始)-------------------------------------------------
◆常識を疑わないバカが日本を壊す。
◆今こそ“新しい教養”が必要だ

■「日本は財政破綻する」→しない
■「日本の公務員は多すぎる」→少ない
■「少子化でデフレが止まらない」→逆
■「年金制度は崩壊する」→しない
■「グローバリズムは正しい」→終焉
■「欧州の多文化主義を見習え」→崩壊
■「ナショナリズムは害悪だ」→健全

メディアには誤った言説が溢れています。本書ではそれらの言説に対し、データをもとに徹底的に反論します。

(引用終了)-------------------------------------------------

メディアが、キチンとした基礎データに沿ったまともな意見を書いてくれれば、こんな本は全然必要ないんですけど、マスメディアが根拠なく適当な事を平気で言うようになってしまったので、もう、こういう本を読まないと、議論の入り口からボタンの掛け違いが起きてしまってどうしようもないわけです。

たとえば、「日本は輸出産業が支えているから、円高でクルマなどが売れなくなったら大変だ」とかの意見ね。そりゃ名古屋の豊田地区なら輸出産業が支えてるんでしょうけど、日本のGDPにおいて輸出産業の比率なんて2割くらいだしね。大前提のところで間違った意見を平気で言われてもなぁ。
このあたりは、もう、本当に議論以前やねんけども。

そういう意味で、それこそ書名の通り「国民の教養」そのものでありまして、「せめて、このくらいの知識は、大前提として持っておいてくれよ。」というレベルの話がたくさん載っています。

これからキチンと勉強したいと思っている人には最適の書。
もうすでに、ある程度自分で問題意識を持って調べてきている人には、かなり退屈な本です。
でもまぁ、勉強してなくてマスコミに踊らされている人の方が多いと踏んで、お勧めにしておきます。


●聖書を語る
これが、実に面白い本でした。やっぱり佐藤優はすごいなぁ。博覧強記。小室直樹の後を継ぐのではないか? という感じがする。

で、その佐藤優の博覧強記を上手に解説しながら自分の意見も言う中村うさぎも堂々たる論客であります。彼女もよく勉強してるんやろねぇ。

実は、この二人、二人ともキリスト教徒なんだそうです。それも二人ともにプロテスタント。カルヴァン派とバプテスト派(ピューリタン)なので、ちょっと毛色は違いますけども。

キリスト教に関する、信者側のストレートな意見がわかって、僕的にはとても面白かったのです。宗教について考えるというのは大事よねぇ。ここのところをしっかり勉強せずして、「世界の中の日本」が分かるわけがないのだと思う。
「宗教」に関する基礎知識はやっぱりしっかりと身につけておかないと、これからの世の中をまともに生きていけないと思う。

せめてキリスト教なら「プロテスタントとカソリックの違い」くらいは知っておかないと箸にも棒にもかからないですわね。あんなもん、ほとんど別の宗教でっせ。いやほんま。まぁキリストという教祖と、後のパウロによる教団としてのキリスト教の乖離というのも、かなり大きな差なんでしょうけど。

日本人は「宗教について学ぶ」というと、すぐに「洗脳されてしまう」みたいな恐怖を持ちがちなんですけど、それって僕から見ると、百円ライターをはじめて見た山奥の原住民がライターを「悪魔の道具だ」と毛嫌いしているようにしか見えないんですよね。たかが百円ライターじゃん。って思う。


●そんなもん、怖がってどうすんの? バカじゃないの? バーカ。

って感じなんですけど、そこはさすがに佐藤優さん。この本の中で、宗教について学ぶと言うことに関して

●人生は旅。自分の行く道はひとつだけど、ガイドブックで他の道を見ておくことも良い旅の秘訣だ。

という、実にうまいたとえをしてました。

(引用開始)-----------------------
 ただね、宗教の重要性は、いろんな宗教を勉強することができるところにあるんですよ。ある一つの宗教を勉強したからって、その宗教の信者になる必要はない。自分には自分の宗教があるわけです。旅行にたとえるなら、自分が行くことが出来る道は一つしかないけれども、他のいろんなルートについて考えることは出来る。旅行ガイドブックを読んで、地図を見て、時刻表を調べて、他の人の旅行記を読む。これらの作業が、自分のたった一つの道を知るうえで、とっても重要なんです。
(引用終了)-----------------------

うまいなぁ。
見事だなぁ。
この説明。

なにより、僕みたいにライターを怖がったりしてるバカを、「バーカ」と罵ったりしない。ちゃんとバカにも納得できるように説明してくれてるわけです。

●ライターというのはね、危険な「火」を、誰もが扱えるようにした道具なのだから、そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。

と、まさに優しく優しく、諭すように解説してる。だてに名前が「優」になってるわけではないなぁ。すごいなぁ。と思います。

同じこの本のあとがきに、今度は中村うさぎが


●教師が優秀であれば、学ぶことは至上の快感だ。

ということを言っていて、この人も本質をよく分かってるよなぁと思ったんですよ。


(引用開始)-----------------------
 神学は言うに及ばず、哲学、文学、歴史、政治…ありとあらゆることを佐藤優氏は知っている。「拘置所にいる間、本ばかり読んでたからですよ」などと佐藤氏は言うが、刑務所から出た後も、忙しい仕事の合間を縫って大量の本を読んでいる。いつ寝てるんだろうと思うくらい、その知識欲は凄まじいのだ。
 私はとてもじゃないがそんなに大量の本を読めないし、たとえ読んだとしても理解できないに決まっているので、佐藤氏とのおしゃべりによってその知識の一部を分けてもらおうという、このうえなく卑怯でズルい方法を採ることにした(笑)。教師が優秀であれば、学ぶことは至上の快感だ。その点、佐藤氏は最高の教師である。
(引用終了)-----------------------

そうなのですよ。
学ぶなら、最上の教師から学ばないといけない。

僕なんて、この中村うさぎみたいに「良き生徒」の役目もできないわけです。バカに対して「おまえバカ。バーカ。バカバカ。」としか言わないから。

なんでそう言うことしか言わないかと言うと、自分がバカだからですね。
自分が昔「バカなのにバカであることにも気づいてないバカ」だったから、おなじように「自分がバカであることに気づいてないバカ」に対して、どうしても「お前はバカなんだから、そこに気づけよ。」と言うことしかいえなくなっちゃう。

で、自分に知識がないからこそ、この佐藤優さんみたいな「最良の教師」の本を読め! と言うことを言うしかなくなるわけですね。

「教師が優秀であれば、学ぶことは至上の快感」なんですよ。でも、僕は「優秀な教師」ではなくて、「やっと自分がバカであることに気づいただけの出来の悪い生徒」でしかないわけです。

なので、僕に言えることは「バーカ。お前、バカ。」という事実の指摘と、それによる「私はバカなのだ。」という自覚の促し、それに加えて「本を読め」という方法の勧めしかできないというわけなのです。

ちゅうことで、本は読みましょう。私に教える能力はないので。うむ。

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