私コピーライターという仕事をやっておりますので、友人にもライターがおりまして。

で、その男が、前々からiPhoneを欲しがっていたのですが、iPadの発表以来「iPadの方がいいなぁ」と言い続けておるのですね。

で、彼の気持ちは、同じライターとしてよく分かるわけです。ようは「文章書きに使いたい」という事なわけです。iPhoneでは、長文を書くにはちょっと辛いですからな。

で、僕はすでにiPhoneを持っているので、会うたびに「iPadとiPhoneとどっちを買ったらええやろか?」という話になってしまうわけです。

しかし、これが、かなり難しい話でしてなぁ。

僕もiPhoneを買う前なら、「そらiPadがええんと違うん?キーボードも大きいし、文章入力しやすいから」と言ってたんでしょうが、いまはどうにもそうとも言えない気分なのでありますね。

なんつってもライターはブラインドタッチなんですよ。見ながら打ちなんかしない。その彼も当然ブラインド。これは、若いときに「ブラインドタッチだけは覚えといた方がええで。」と言うことで、二人して覚えたわけです。

が。

実はiPadでは、根本的にブラインドタッチはできないわけです。物理的に不可能なんですね。

というのは、ブラインドタッチというのは、物理キーボードのキーボタンに「指を触れさせて」キーボードの位置を指の感覚で確認しながら打つ手法だからなんです。「ボタンを押す」という事をせずに「触れておく」だけにしておいて、相対的なキーの位置を頭に叩き込んでいくというやり方なんです。

なので、「触れただけで文字入力されるタッチパネル」では、基本的にブラインドタッチはできないわけです。

いや、まぁ、手を空中に浮かせて、勘で打つというのは、できなくもないとは思うんですけど、手首を浮かせたまま打ち続けなくてはならないだろうし、普通のPCと、あまりに操作感が変わってしまうから、普通のPCが使えなくなってしまうし、多分、そういうしんどい事はしないだろうなぁというのが本当のところなのです。

iPhoneを触って、「ああ、なるほどなぁ」と感心したのが、どうやってタッチパネルで文字入力をさせるか?というルールの作り方なんですけど、通常のキーボードがボタンを「押したとき」に文字が確定されてデータとして入力されるのに対して、iPhoneは「指を離した時」に文字が確定されてデータとして入力されるんですね。

だから、キーボードのあらぬ位置から、とりあえず指をキーボードにタッチさせて、目的の位置に指が到達したところで指を離して「入力!」という不思議な操作が可能なようになってるんです。

これは、実は、ブラインドタッチをしていない人には、ものすごく快適なはずなんですよ。なんでかというと、指という体の動きと、文字を探すという行為が完全に一致してるからなんですね。イライラすることがない。

普通の物理キーボードだと、キートップに文字が書かれていますから、指でなぞって文字を探すと、文字が隠れて見えないわけです。だから指でたどりながら探すということがしにくくて、いきおい、体を硬直させてキーボードには一切触れずに「目」だけで文字を探すことになります。

しかも、文字の大きさは全部一定ですから、よほど意識してないと目標の文字を見つけることが難しくて、たとえば「わたしはけさ、あさはやくにおきました。」と打とうとしたら、まず「わ」の一文字を「わ、わ、わ、わ、わ」と口の中、あるいは頭の中で繰り返して印象づけながら探す、ということをしないと、見つけられなくなっちゃうわけです。

で、「わわわわわわ」と言ってる間は、目でキーボードを追ってますから体が硬直して動かない。緊張状態になっちゃうんですね。
まぁ、パソコン初心者でキーボードに触ったことのない人だと、そういう状態になります。このあたりは誰でも同じでしょう。例外はないはずです。ただ、ボタンの数は知れてますし、打ってるうちに位置を覚えてきて、探す緊張が少しずつ減っていくという話なわけです。

しかし基本、物理キーボードでの見ながら打ちというのは、「わわわわわわ」か、「わわわ」か「わ、わ」かの長さの違いはあれ、一文字検索を目で行うと言うことが必要なので、頭の中では文章ではなくて「一文字」を意識して入力しないといけないわけですね。

でも、たぶん、iPadのタッチパネルだと、「触った文字」は大きく表示されて、その指を離した時に一文字確定がされるので「『わ』は、このへんだったよな」と指を適当にすべらせて、文字が大きくなったときに、「ああ、これこれ」と指を離せば良いわけで、たぶん頭の中では「わたしはけさ、あさはやくに」くらいは、文章を保持したまま入力ができるはずなんですよ。

たぶん、iPadというのは、そういう文字入力をエンタテインメント化する仕組みを持ったツールなのだろうなと思うわけです。
なにより、キーボードと画面が同じ位置にあるので、通常のPCのように、画面とキーボードの間を繰り返し視線移動しなければいけないという負荷がかなり少ないわけです。
だから、そういう意味で一般人にとってはとても文字入力のしやすい端末になるはずなのであります。

ですから、雑誌などのiPadの評価を聞いていても、「キーボードも大きくて打ちやすい」みたいな話が多くて、友人のライターのように「ブラインドタッチができるのか!」と期待してしまったりする、というわけなんです。

でも、実態は全然違う。

ジョブズは、ブラインドタッチを覚えるような「ヲタク」的な人間のための機械なんか、創りゃあ、しませんよ。
もっと普通の、一般的な、どこにでもいる、おねえさん、おかあさん、じいさんばあさん、こどもにも使えるような機械しか創らないって。

そう考えていくと、iPadで文字入力というのは、一般人には、すごいエンタテインメントになる可能性があるのですけど、ブラインドタッチができる人間には、かなりの拷問になる可能性があるわけです。
まぁ「見ながら打ちで行くんだ」と割り切れば、まぁまぁそこそこ使えるんだろうと踏んではいるんですが、それでも物理キーボードほど反応よく、スパンスパンと入力することはできないでしょう。

で、そんなことを話していたら、iPhoneのOSがバージョンアップして、4.0になるというニュースがやってきまして。
で、今度の4.0からは無線のbluetoothによる外付けキーボード接続が解禁になるという話が出てきたんですね。

いままでiPhoneには、bluetoothはついていても、外付けキーボード接続の規格には対応してなかったんです。でも4.0からは外付けキーボードが使える。

というのは、iPadも実は外付けキーボードが使えるらしくて、そのあたりでOSのバージョンをそろえてるらしいんですな。まぁ本当に文字入力をサポートするなら、外付けキーボードは必須にならざるを得ませんわな。

ただ、それは良いのですが、そうなるとiPadにキーボードつけると、それこそネットブックと同じ感じで、本体を立てて、手前にキーボードを置いて使うということななって、まぁ持ち歩きはできないよなぁって事になる。それならPCがあるから、そんなもんはいらんっちゅうことでして、なんのためのiPadか?って話になっちゃうんです。

で、OSがバージョンアップされるなら、iPhoneだって外付けキーボードが使えるようになるわけですよ。なら、折りたたみキーボードを持ち歩いて、必要な時に物理キーボードでブラインドタッチした方が、ブラインドタッチができる人間にとっては快適なんじゃないの? って話になってくるんですね。
まさか、iPadと折りたたみキーボードの両方を持ち歩くような酔狂な人間はおりますまい。

それに、文章を書く、というのは、ようはネタを思いついて、それを書き留めておくというところからスタートする物でして、そうなると、最初のネタをどうやって拾うのか?となると、手帳なみの小ささのiPhoneの方が、思いつきメモには強いわけです。なんせ歩いてる時とかに一番アイディアが良く出ますからな。

ということで、「ああ、やっぱりiPhoneかねぇ。」となるんですが、そういう話をしていると、「でも、iPadは、何冊もの本を、あの本体の中に入れられるんだぜ。」という本質的な魅力の話になってしまうんですな。ライターは本を良く読みますので。鞄に3冊とか普通だし。

「それに大画面だと、文章の手直しは楽々やぞ。」という声も出てくるわけです。

「ああ、そりゃそうだ」

と、僕も思うので、「じゃあ、iPhoneとiPadと両方買ったらええやん!」という事を言うわけですが、そうなると実は、ライターにはオーバースペックなんですな。
「いや、そこまでする必要はないやろ。どっちか一つあれば。だいたい回線料とか金がかかりすぎるぞ。」
と言う話になりましてねぇ。

まぁ、僕の場合は携帯の電波が停止(2G回線だったので)するから買い換えるしかなかったので、そのままiPhoneにしたわけですが、そういう明確な理由がなければ、悩みますわな。
だいたいiPadにはデジカメがついてないし。

まぁ、しょうもない話ですが、いまいち決めかねるよなぁ、という友人の悩みは、まぁ実によくわかるのでありました。

ともあれ、なんだかんだ言っても、やっと日本もスマートフォンの時代になりまして、僕はやっとまともになってきたよなぁと安心してるというか、ありがたい感じなのであります。

日本の場合は、ザウルスみたいな、実用の役に立たない電子ガジェットが「電子手帳」として幅を利かせていたというよろしくない風潮があって、あれのおかげで、かなりスマートフォンというものの定着が遅れたよなぁと僕は思ってるわけです。

いまだにスマートフォンと言っても「オモチャみたいなもんやろ?」と思ってる人は多いわけです。あまりに「電子手帳」「ザウルス」とかのバカっぽいイメージが先行しすぎたんですね。

もちろん漢字をいかに入力するか?という問題があって、そこがひっかかってブレイクスルーが起こらなかったということも大きいんですけど、でもやはり基本は「実用」を大事にするかどうかなんだと思うわけです。オモチャやガジェットじゃだめなわけで。

そういう意味では、数年前にpalmに触れたときの驚きというのは、なかなかに大きかったんですよね。「ああ、これは実用的だ!」と感心してしまったわです。
以来、かなりpalmには入れ込んだんですけど、いかんせん、日本のpalm機の最先鋒であったSONYがpalmから撤退してしまって、またまた日本のスマートフォンの夜明けが遅れたというのがあるのです。

知ってる人は知ってますが、日本ではやっといまごろ超話題の「スマートフォン」ですが、世界市場で見れば、iPhoneは第三位のスマートフォンでしかなくて、あくまでiPhoneは「新世代のスマートフォン」なわけです。それ以前に、ちゃんとシンビアンとブラックベリーがいてましたからな。(palmもいちおう残ってるけど、すでにして三強には入れません。やれやれ。)

いやまぁ、もうシンビアンもブラックベリーもしんどいでしょうが。

いまはもうiPhoneとアンドロイドですわな。

日本の携帯もガラパゴス携帯とか言われてますが、ある意味、「携帯」のまま中途半端に進化しすぎちゃったんですな。

ということで、日本の携帯市場もスマートフォンが大きな黒船として衝撃を受けておるわけです。いまドコモが、いろんなタレントを使って「ケータイ」の擬人化コマーシャルをやってますが、あれは一種の危機感の表明であります。ひとりずつが違うメーカー、違うデザインの「ケータイ」を持つという日本のケータイ文化のあり方を「よろしおまっせやっぱり」とアピールしてるわけです。文化として良いでしょ?と言ってる。

でも、iPhoneを持ってると、そういう感覚ではないんですよね。iPhoneの姿形は、みんな同じで、別にそれでもかまわない。アプリやら使い方が違えば、それで良いのだという割り切りになってくる。OSで進化させていく、というのはそういう事なんですよね。街なかで、iPhoneユーザーを見ることがどれだけ多いか。今後はスマートフォンが当たり前になっていくんでしょう。
日本人はどうにも変わる時は一気に行っちゃうからなぁ。

twitterにせよ、スマートフォンにせよ、大きな波が日本にやってきているって言うのは感じざるを得ませんわなぁ。

ということで、私は、ま、palm時代のノウハウそのままに、iPadではなくiPhoneで、折りたたみキーボードでしばらくはやっていくのであります。ほんとにpalmと似ていてやりやすいですわ。実用を突き詰めていったら、同じような形にしかならないんだと思うんですよねぇ。結局。

palm時代のSONY機と、iPhone、そしてアンドロイドを初め、これから次々登場してくるスマートフォンがどれだけ見た目やデザインが似ていることか。そういうことをすごく感じるのであります。
良い悪いは別にして、やはり大きな流れというものは大きく我々の生活を変えていきますね。いやほんま。


コメント

権之助
2010年5月26日23:44

シゲさん、iPod Touchを忘れないでやってください(^ー^)
blog.livedoor.jp/nob_kodera/archives/2689608.html

シゲ
2010年5月28日0:38

>権之助さん
iPod touch は、電話はケータイがいい!んだけどiPhoneも触りたいという人には、かなり魅力的なようですね。

しかし、考えてみたら「iPad はでっかいiPhone」と思ってましたが、本当は「でっかいiPod touch」だったんですよね。デジカメついてないし。

でも、僕はiPhoneのデジカメ機能がかなり好きなんですよねぇ。「撮るメモ」というアプリがあって、写真でメモするツールがあるんですが、これがかなり好き。あと、書籍のバーコードをデジカメで読み取ってamazonからデータを引っ張ってきてくれるデータベースソフトItem shelf もお気に入りだし。

あと、当然携帯電話ね。あんまりたくさんモノを持ち歩きたくないのでひとつにまとまってるのが僕的にはうれしいのです。ケータイの電話帳と、パソコンのメールアドレスも、比較的簡単にひとつにまとまるし。いや、iPhone。良いですよ。やっぱし。

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