衆議院選挙スペシャル(2):もう一度「それでもボクはやってない」を分析する。(1)
日本の政治が変わる投票日まで、少しになってきました。
ここで、少し大きな問題を整理しておきたいなと思いまして。

それで、痴漢えん罪事件を取り扱った、周防正行監督作品の「それでもボクはやってない。」

http://astore.amazon.co.jp/kids1226-22/detail/B000QJLROI
●wikiでの解説
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%81%A7%E3%82%82%E3%83%9C%E3%82%AF%E3%81%AF%E3%82%84%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%AA%E3%81%84

を、今一度とりあげたいと思ったのです。

「それでもボクはやってない。」は、「Shall We ダンス?」(96年、日)という大傑作映画(大ヒットして、リチャード・ギア主演のアメリカ版も作られました。)
http://ja.wikipedia.org/wiki/Shall_we_%E3%83%80%E3%83%B3%E3%82%B9%3F

を撮った周防正行監督が、その次に放った渾身の社会派ドラマです。これもまた大傑作で、社会派ドラマだけど、全然堅苦しくなく、あっという間に2時間半が過ぎてしまうというサスペンスドラマ仕立てになっています。本当に、あれよあれよと最後まで見てしまいます。

今回の選挙の大きなポイントは民主党vs.自民党というようなことではなくて、「官僚政治を良しとするか、否定するか」という事なんだと昨日の日記に書きました。

●衆議院選挙スペシャル:(1)「失われた10年」官僚の給料は上がり続けた。「財源」はそこにある。
http://hitoyomi.diarynote.jp/200908191800549325/

で、その官僚の腐り方を実に見事な「おもしろいドラマ」に仕立ててあるのが、この映画なんですね。

でも、いかんせん、「電車の中の痴漢に間違われる」というシチュエーションは、都市部に住んでる人にしかリアリティがないわけです。地方に行けば行くほどクルマ社会になるので、この映画自体、興味を持ってもらいにくい。

でも、官僚政治の打破っていうのは、都市部の人間だけのものではなくて、日本全国の国民の問題であり、もっと言えば、本当に影響を受けるのは地方に住んでいる方がたの毎日の暮らしの方なんですよね。日本の官僚政治のゆがみは地方にこそ大きな負担を背負わせていると思う。

なので、この際ネタバレになっても良いから、キチンと紹介しようと思ったわけです。

---------(以下、完全にネタバレ。)-------------

この映画では26歳のフリーターの男の子が主人公で、会社に就職すべく、面接に出かけるところから話がはじまります。
はじめて行く場所なので、すごくあわてていて、間違えて反対方向行きの準急か何かに乗ってしまうわけです。

すごく混んだ車内。でも、各停じゃないので、数駅分はそのままの状態になるわけですね。
で、あわてて降りて乗り換えようとしたら、中学生の女の子が「あなた、私をさわりましたね。どうして触るんですか!」と詰め寄ってくるんです。

「いや、そんなことしてないよ。」と主人公は否定するわけですけど、彼女はどうしても納得しない。で、駅員さんにキチンと話を聞いてもらおうと思ったら、駅員さんも一切話を受け付けない。もう、頭から犯人扱いなわけです。

どう考えたって勘違いなんだから、キチンと話せばわかってくれるだろうと、この段階では主人公の彼は思ってるわけです。

が、あにはからんや、彼はこのまま駅務室に連れて行かれて、そこから警察に送還、そのまま拘置所まで一直線です。誰も彼の言葉を聞いてくれません。
「どうなってるんだ? これは?」と思う。

実は、彼はこのまま「ボクはやってません」と言い続けて、半年以上拘留されることになります。
ここが映画のネタバレ、というところなわけです。事前知識なしにこの映画を見ると、


●えええええ? うそ!

となります。まさに急転直下、ジェットコースター並の急展開です。


でも、痴漢で疑われたら、現実に、こういうとんでもない状況に巻き込まれるんです。それが日本の現実なんです。この映画を見ると、いきなりそこに巻き込まれていきます。

言っておきますが、「いったん家に帰って体制を整える」なんてことは一切できません。駅務室から警察のブタ箱まで一直線で、そのまま半年です。

知ってました?

知ってたなら良いですが、知らなかったら、いま、キチンと認識してください。
日本の痴漢取り締まりにおいて、えん罪が発生し、本当にやっていない、無実の人が「やっていない」と主張したら、延々、ずっと警察に拘留されることになるんです。

ここで、ネタバラシをまたやります。

なんでここで、彼が「やってない」と言ってるのに、駅員も警察も一切取り合わず、そのまま拘留になってしまうのか? には、秘密があります。

それは「私人による逮捕」という考え方です。

彼は、実は、駅で中学生の女の子に呼び止められた時点で、この中学生の女の子に逮捕されたと、法の上ではみなされてしまっているんです。すでに「逮捕」された「容疑者」だから、ほぼ犯人扱いで、「やってない」という主張が通らないわけです。

「私人による逮捕」というのは警察官などによる逮捕ではなく、一般人による逮捕ってことですね。この場合は、その一般人が中学生の女の子だった、ということです。

通常、「私人による逮捕」というのは、たとえば公園で暴漢に襲われて、殺されかけたとして、その暴漢を取り押さえたような場合に「警察を呼んでくれ~!」と言うじゃないですか? そういう状況を想定して、現行犯逮捕の権限を、そういう状況下においては認めるという事なわけです。

たまたま銀行に行った時に銀行強盗に出会って、その強盗を捕まえたとかね。

こういうのは状況から、その犯人が罪を犯したということははっきりしてるわけですから、「私人による逮捕」で良いのです。

が、そういう状況と、痴漢の現行犯をいっしょくたにしたら、それはおかしい。
というか、日本の満員電車というのは、そりゃたくさんの人はいてるかもしれないし、公衆の面前ではあるけれども、誰もが、その「痴漢だ!」と指指された人が痴漢をしたのだとは把握できないわけですよ。
「え?そうなの?まぁ、女の子がそう言ってるんならそうなんだろうな」という事でしかないわけです。

でも、法律的には「私人による逮捕」でありまして、現行犯逮捕でありまして、現行犯逮捕である限り、その時点で「勘違いによるえん罪」という可能性自体が、まったく考慮されていないのですよ。

だから、この主人公くんは、いくら「やっていない」と言っても誰も話しを聞いてくれないわけです。そのまま拘留され、何ヶ月も家にも帰れないという異常な扱いをされてしまうわけです。それこそ殺人未遂犯や銀行強盗とまったく同じ扱いなわけです。

で、これが日本の現実なんですね。

こんなものね、はっきりと、


●法の不備


ですよ。
頭おかしいんと違うか? こら、官僚ども。
なんで、こんなおかしな、実情にそぐわない法律が、そのまま残ってんねん。

裁判員制度がうんぬんと言いますが、



●法律そのものがおかしい。



場合はどうすんねん! っちゅう話です。

欧米の場合なら、法律を作ったのは国民の代表たる政治家ですから、それこそ選挙で政策を述べている政治家を選べば、それなりに納得も行きます。
しかし、日本の場合は、法律を作ってるのが官僚なんですよ。
だから、こういう「私人による逮捕」という事例の、あるべき姿の判定ということ自体が、官僚の恣意的な思惑で確定されてしまうということにしかならないわけです。

そこが何より大問題なんですね。
まず、そこが問題なんです。


●おかしな法律を作って、平気な顔をしている。


ということがまず、厳しく、厳しく、厳しく、厳しく、厳しく、厳しく問われなければならない。本来官僚が法律を作ってはいけないんですから。




「なんで警察が、法律作っとんねん。
勝手な事さらすなや。
法律作るのは国民(=の代表である政治家)
の専権事項やないか。
おまえらに法律作る権利なんかあるかぁボケ。
まったくない!
それを勝手に法律作ってるという段階で、
おまえらが国家的犯罪人やないけ。
わかっとんのか、こらぁ。極悪犯罪人めらが。」


ということなんですよ。
わかりますか?
これは現実として、ストレートに、官僚は全員、


●国家的犯罪人


という事なんです。法律を作っているという時点で。

ここ、大事なところですから、メモしておいてください。
「官僚が法律を作ること自体が大犯罪である。」です。
本来的には。

あああ、しかし、ほんの入り口だけで、これだけ書かないといけない。
うげー、大変だなぁ。

この映画で取り上げられている問題のうち、警察というブロックの、たったひとつの入り口の問題をとりあげただけで、ものすごい量になってしまった。

でも、警察にはこの後、まだ、

●痴漢犯を無理矢理増産して検挙率の水増しをしている。
●痴漢犯を捕まえる能力自体が欠損している。
●痴漢事件を予防する責任を果たしていない。
●「私人による逮捕」の仕組みを政治的に悪用している疑いがある。

という4点くらいを書かねばならない。あまりにひどすぎて、何も知らない普通の一般人に解説するのが無茶苦茶に大変だということに、今気づきました。

で、この映画に出てくるネタで、僕なりに気づいたことを書くなら、

●裁判官が「疑わしきは罰せよ」になっている
●裁判官は国民に信任されているとは言い難い。
●なにより裁判官の資格審査がとてもいいかげんだ。
●裁判官が検事の意向に沿った判決を出す。
●裁判官が警察の誤謬を認めない。

というような話まで書かねばならず、先があまりに長すぎるのですわ。
うー、困った。
とりあえず、この話、長くなるので、ここで一端終わらせまして、次に続きます。

コメント

お日様だいすき
2009年8月22日7:33

それが明らかに犯罪であるとわかる路上での痴漢行為とは違って、満員電車とかですし詰め状態で運ばれていかねばならない都市の電車のあり方も問題なのではと思ってしまうのであります。最近は女性専用車ってのが出てますが・・・。



田舎にいて満員電車に乗る機会などとんとないので、あまりこうした問題に実際に遭遇する機会は殆ど無いのですか、たまたま東京へ行って満員電車に乗ることがあったときのことを思い出しますと都会で生きるということは常にこうした問題にさらされてるのだろうなと気の毒になります。

シゲ
2009年8月22日10:42

> お日様だいすきさん
そうですね。本当はすし詰めの満員電車が問題なんだと思います。電鉄会社が犯罪を助長してるとも言えますし。でもまぁ、一極集中で都市部に人間が集まりすぎてる弊害ですわね。電鉄会社を責めることもできゃしませんわ。そういう一極集中の社会をそのままにしてるのが問題という話になってしまいますからね。

ただ、実際問題としては、女性専用車両を作るのだったら男性専用車両も作って欲しいよなぁと僕は思いますね。男女が混ざって満員電車に乗ってると、とにかく男は「バンザイ通勤」をする以外に痴漢を疑われずにいる方法がないわけですよ。心安らぐ術がないわけで、かなりのストレスなんですよね。

東京だと、すし詰め状態が大阪よりひどいから、サラリーマンはどうしてるかというと、カバンを胸元で抱えて立つ、という形になることが多いのですよ。荷物も回りの邪魔にならず、移動のときにカバンがひっかかって混乱も招かず、手が胸の前にあることで痴漢と疑われることもなく、一応安全な体勢ということになります。

で、このカバンを胸元にかかえたサラリーマンが、車両から押し出されるようにホームに流れ出てくる映像というのは、なんというか、悲惨というか可哀想というか、ちょっと見てられないんですけど、それは僕だけなんでしょうかねぇ。なんとかならないものかと思います。

まぁ大阪はそこまでひどくないですけどね。東京は狂ってるよなーとは思います。確かに。

お日様だいすき
2009年8月23日21:16

まったく、酷い話です。海外であんな満員電車に人を乗せたら暴動が起こると知人が言ってました。幸い?私の仕事はラッシュ時間からずれた勤務時間だったので助かっていたのですが・・・。だから、他人の問題だとそう問題とも感じないですませてしまったのですが・・・。それが、日本の活力の源泉だったのねとまったく、日本のサラリーマンがかわいそうになってきます。

男性車両も必要でしょうねぇ。確かに・・・。まあ、男と女って根本的に違う生物種だって思ったほうが良い所もありますし・・・。

それにしても、あの満員電車で通わねばならない企業中心社会が問題な訳でしてね。まあ、偏に企業中心社会が生み出した喜劇ともいえますでしょうねぇ。

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