ということで、

街なかの写真屋さんというのは大変な歴史を持っているという話。
http://hitoyomi.diarynote.jp/200906141004075873/

の続き。

前のメッセージで書きましたが、街なかの写真屋さんというのは、店頭DPE機時代にすごく儲かったわけです。
今の「液晶画面で写ったかどうかを確認する作業」を全部有料でやっていたのだから儲からないわけがないんですね。
しかも、
●現像料
と、
●同時プリント料
という二重請求が当たり前だったわけです。

現像代\1,200+プリント1枚30円とか普通でした。これで24枚撮りのフィルムを同時プリントで頼むとプリント代が720円で、あわせて2000円近くになったわけです。
で、あんまり儲かるので過当競争になって、安売り合戦が激化したわけですが、その時に、現像代は基本料金として値下げせずに、プリント代金の方を下げるというやり方が流行ったんですね。

●プリント代0円!

なんていうのが出てきたわけです。これが今に至る「業界の遺恨」なのですね。

まぁ、当時はプリント代競争でも良かったのですが、これがデジカメ時代に入ると、デジカメには「現像代」というものが存在しなくなっちゃったわけです。稼ぎの基本部分がなくなってしまった。なので、時代の変化で、いきなりものすごく稼ぐのがしんどい業種に変わってしまったわけです。

世間の皆さんは「プリント代なんて安いもの」という意識だけがありますから、とにかくプリント代で比較するような風潮だけが残ってしまってるわけですね。「オタクの店はプリント代いくら?」と質問されるに違いないと、業界全体が考えてたし、そういう考え方をベースにするしかなくなっちゃったわけです。

なので、デジカメ時代に入ってもプリント単価の競争という構図は残りまして、現在で言うと、写真店の店頭即日プリント代が1枚30円~40円、ドラッグストア経由で1~2日待ってのプリントが1枚20円程度(受け取りに行くので郵送費不要)、インターネットで写真データをアップロードして、郵送でプリントを送ってもらうサービスが10円~20円程度(郵送費別)という事になります。

(どのお店も、たいていはボリュームディスカウント=大量発注割引の仕組みはあると思いますので、一概には言えないんですけども。)

写真のプリントが1枚20円だと、どういう事になるかと言うと、一日に500枚プリントして、やっと1万円の売上、5000枚プリントして、やっと10万円の売上、ということになるわけです。1人のお客さんで十枚~数十枚プリントが普通なので、一日に数万円の売上は上げられますが、原価や場所代などの必要経費を差し引いていくと、それほど大きく儲かる商売ではないというのは、すぐにわかると思います。

昔のように「確認のためだけにプリントする」なんて事はありませんし、写真の多くは「ディスプレイ」で見て終わり、というものになってしまってプリントされることが減ってしまったわけです。
プリントするにしても、パソコン用のプリンタがあるから、それでプリントしたりします。

(ちなみに、パソコン用のプリンタで写真印刷をすると、用紙やインクの値段を合わせると、1枚40円前後になります。プリントの失敗やら、プリント前の赤目処理等、手間まで考えれば、写真屋さんでプリントする方がお得です。念のため。)

なので、写真屋さんにプリントを頼む必要自体が、かなり減ってきているわけで、そういう意味では写真店さんは、店舗面積を縮小したり、人手を減らしたり、いろいろ工夫しながら、運営していかなきゃならないんですが、人気のあるお店であればあるほど、プリントする機械に人間が張り付いていなきゃならないんですね。

自分でパソコン用プリンタで写真を印刷したことのある人なら、写真のトリミングやら、色調補正など、かなりの手間がかかると言うことがわかると思うのですが、街の写真店さんは、そういう作業をすべて、一枚一枚、目視でやっておられるわけです。

店頭DPE機を何台用意して、何人体制でやっているかはそれぞれでしょうけれど、とにかく、一日に数千枚の写真をプリントしないとペイしないわけですから、それを全部1枚1枚目視しながらプリントをされてるんですね。
まぁ大変な作業です。

写真は全部一枚ごとにレイアウトも違えば色調も違うし、内容もまちまちですけど、たとえばフラッシュのせいで赤目になっている写真があったら、その赤目処理なんかを、パパパっと手直ししてプリントしたりしてるわけです。そりゃもう職人技ですな。

そういう作業を朝から夜まで、ずっとやっている。なんというか頭の下がる思いでありますよ。

正直言って、あんまりそういう仕事ってしたくないなぁって思うんです。少なくとも僕は。一枚数十円程度なのに、そんなに手間をかけて、しかも何千枚も処理しないといけない。それはもうぞっとする作業です。




でもね。




ここが大事なところなのですが。

そんな大変な仕事を、どうして続けておられるんですか? と写真店の店主さんに話を聞くと、少なくとも、そういう人気店の店主さんはみな、「やっぱり写真が好きですから」と答えられるわけです。

で、その「写真が好き」という言葉の裏には、「写真というものは、本当に良いものなのだ」という熱い熱い想いがしっかりとあるんですね。

その写真の一枚一枚が、とても大事な人の写真だったりするわけですよ。

感動するのは、地域でずっと写真店を経営し続けていると、赤ちゃんの写真をプリントしてるうちに、その子が大きくなって小学生になって、修学旅行に出かけて、大学を卒業して、結婚をして、その子供までが生まれてと、ずっと写真でその生活をつぶさに見る、なんてことがあったりするわけです。親子二代を写真で見ていたりするんですね。

プリントが写真店さんに残っている訳ではないですけれど、それぞれの被写体となった人たちの人生とともに、その数十円の写真がアルバムなどになって、それぞれの家庭に残っていたりする。

そこがとても楽しくて、やりがいのある仕事なんだそうです。

まさに写真は、その人の心と人生を写している、不思議で素敵な存在なんですね。

で、その面白さ、不思議さに、誰もが魅入られてしまうし、写真店をやっている人も、写真を写す人も、そこが面白くて写すしプリントしてながめるわけです。

それが写真という存在の魅力の根源で、この魅力を大切にしている限り、「街の写真屋さん」という商売は必要だし、残っていくんだろうなぁと、僕はしみじみと思っているのです。

ということで、「写真は、その人の心と人生を写している、不思議で素敵な存在なんだ」という話は、また続きを書きます。
書き出すと長くなっていかんですな。
うむ。

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