小室直樹先生、老いて、なお軒昂なり。
2009年5月17日 読書mixiのほうでマイミク登録させていただいてる方が、小室直樹先生ご出演の動画を紹介してくださっておりました。
おおお、小室先生ですか、と言うことで拝聴いたしました。
http://video.google.com/videosearch?q=%E5%B0%8F%E5%AE%A4%E7%9B%B4%E6%A8%B9&hl=en&emb=0&aq=f#
小室先生のご著書は、いろいろ拝読してまして、ほんとうにすごい方で、とても尊敬してしまうわけですが、ではいったいどういう人なのか? というと経歴等は、僕は実は良く分かってなかったんですよ。
で、この動画の最初に小室先生の紹介がちょろっと入っていて、その紹介だけでもとんでもなくすごいので感心しました。
「本日は、法学博士であり、政治学者、経済学者でもある小室直樹さんをお招きしています。
小室さんは、1932年東京生まれ、京大で数学・物理学を学んだ後、大阪大学大学院で経済学を学び、その後アメリカへ留学し、(ミシガン大学大学院へフルブライト留学) 心理学・統計学・社会学を学んだ後、帰国後、人類学・法学・政治学を学ぶという非常に多彩な方です。」
と、こうなる。いや、しかし幅広い。
で、はたと気になってwikipediaを調べてみたわけですよ。すると、まぁなんちゅうか、やっぱり小室先生は、師事した先生がまたすげぇなと驚くことになりました。
政治学は丸山眞男から学んでるし、社会学はマックス・ヴェーバーの翻訳者、大塚久雄から直接教えを受けているし、社会人類学は川島武宜からと、王道中の王道というか、大御所ばっかりじゃん! すげーな、これはって思う。ああ、知らなんだ、という感じです。
アメリカ留学中だって、マサチューセッツ工科大学大学院(あのMITの大学院ですよ!)で、近代経済学の父と呼ばれるポール・サミュエルソン(オバマ政権の国家経済会議委員長を務めているローレンス・サマーズのおじさん)から学んでるし、ハーバード大学の大学院にも行ってる。まぁすごいっちゅうか、なんちゅうか、あれですな、超・超・超、スーパーハード勉強オタクって感じですわね。
で、さて動画の内容は、というと、これが日本教とはなんぞやという話し。
日本人がネイティブにもっている宗教観を「日本教」と名付けたのは、イザヤ・ベンダサンこと「日本人とユダヤ人」を書いた山本七平さんですが、小室先生は、この山本七平さんの後押しもあって、かの「ソビエト帝国の崩壊」を出版されたわけです。
なので、小室先生も、基本的に「日本教」ということに関しては深く研究されておられて、その内容は、この動画を見る限り山本七平の考え方を受け継いだ上で、それを越えるほどに深まっているなぁと感心する内容でありました。
「空気読めよ」のKYという言葉も、結局は、『「空気」の研究』を書いた山本七平さんの業績がベースになっているのであって、小室先生もまた、その業績の上に、より高い見地を求めておられるようです。この動画の中でも「空気」というものの怖さを論じておられますね。
山本七平さんの著書の数々を、僕は読んでないわけですが、それでも山本さんの考え方に通じている人たちは山本学派と呼ばれているくらいで日本人による日本人研究の、非常に重要な学派だということは言えるでしょう。
ちなみに、僕は「ソビエト帝国の崩壊」を1980年の初版時に読んでまして、すごく面白く読んだんですが、これがその後、本当にソ連が崩壊(1991年)してしまいまして、その崩壊の過程を、実に見事に10年以上前に言い当ててたということで、小室さんの評価が、ますます高まったという事なんですね。
でもって、僕がよく話題に出す副島隆彦さんは、この小室直樹さんの弟子筋にあたる人でして、副島さんも、アメリカ経済の崩壊を、5年も前から崩壊の過程まで含めて言い当てていたということで、いまや大注目の言論人になってしまいました。
師弟ともに「予言」して当ててしまってるわけです。それもかなり規模の大きな予測を。
この間も、梅田の旭屋書店に行ったら、副島さんの新刊の『日米「振り込め詐欺」大恐慌』が店頭の一番目立つところにずららららーと並んでいて、「ああ、いい扱いをしてもらえるようになったんだなぁ」と、感慨深かったです。(って言いつつこの本は買ってないし読んでないんですがね。)
副島さんがアメリカ経済崩壊を言い当てた「やがてアメリカ発の大恐慌が襲いくる」は、この日記でも5年前に紹介してます。
http://12917.diarynote.jp/?month=200404
しかし、いま読んでも感心するけど、僕、ものすごく勧めてるんですよねぇ、この本を。
副島隆彦の、他のどの本でもなく、この「やがてアメリカ発の大恐慌が襲いくる」を勧めてる。我ながら感心してしまいますな。
で、小室先生も、まず何より「ソビエト帝国の崩壊」がおもしろかったんですよね。とにかくそれだけ内容がズバ抜けていたわけです。超飛抜けて面白かったんですよ。1980年当時は。
僕は本が好きで、よく読みますが、とにかく週に6日くらいは本屋に寄るわけですよ。で、チラチラチラと表紙を見て、気になる本だけをパラパラとページをめくって見ていくわけですね。
で、興味が出たら買うけど、興味が湧かなかったら買わない。
で、上記の「ソビエト」も「アメリカ」も、手にしてパラパラっと見ただけで「わ、面白そう!」だったわけですわ。
そういうのはね、もう、本の方が光り輝いてるというか、語りかけて来るというか、そういうのがあるんですね。
これは週6日、本屋に行ったら、誰でも自然と身に付きます。全然違うねんもん、内容が。まったく。まるきり。ズバ、抜けている。
せこい話ですが、本を買うっちゅうことは、自分でお金を出す、ということで、買う時に、ものすごく逡巡するわけですよ。「買って損せんかなぁ」とか。
ここが、ものすごく大事でね。
こういう発想は図書館で本を借りてたら絶対に身に付かないんです。だから本は買うのが大切。
(今後、情報はどんどん「お金を出さないと有用なものが得られない」という方向になっていくと思います。無料は基本的にダメ。名前やメアドを登録するタイプのは、まだちょっとマシ。それは自分のメアドを「売った」という事なんですよね。だから、まぁ数十円の価値はある。でもその程度です。で、自分で金を出すからこそ、そこではじめて、「自分にとって本当に必要な情報」が、「自分で納得できる」となるんです。なので図書館で本を借りたりしたりしてるだけでは、まず「自分が納得できる情報」が得られないです。まぁそれでも良いという人はそれでも良いのですが。)
で、上記の「アメリカ本」も「ソビエト本」も、「うわー、絶対読みたいわ、これ。」という内容だったわけです。喜んで金を払った。そういう事ですね。それだけ優れてたんです。
本屋でお金を出して本を買ってたら、そういう事は一発でわかるようになります。なんせ、自分の身銭を切ってるわけですから。
逆に言うと、ここで身銭を切らないと、何も身に付きません。一切身に付きません。それは確実であります。絶対と言っていいでしょう。
まぁそういうものです。
よくWinnyとかのファイル共有ソフトで、動画や音楽ファイルをタダで泥棒している人がいてますが、こういう「価格対内容比」を真剣に検討する機会を、自ら失わせている人という事で、まぁほとんど白痴の行為ではないでしょうかね。なんというバカでムダな事をしておるのか、と思う。
タダだと真剣にチョイスせんじゃないか!
それでは「読者としての能力」が、いつまでたっても身に付かないのでありますよ。「良いモノを見抜く力」ですね。それが身に付かないのなら、本を読んだり、音楽を聴いたり、映画を見たりしても全然意味がない。質の低いものをただダラダラと見てても、あんまり感動しないのになぁと思うだけなのであります。
一冊1500円くらいの本を、まぁ月に5冊くらいで7~8千円です。4冊しか読めなかったら6千円くらい。年間で100冊、7~8万円くらいですね。やっぱりそのくらいは読みたいし、投資して損はないです。超お得ですから。毎月6千円をどんな情報に投資するのか? を真剣勝負で考える。これが大事です。週5~6日書店に行って、買わなくともパラパラと一回に2~3冊はチェックしますから、月に数十冊はチェックした上で4~5冊を選ぶわけです。その真剣に選ぶ行為が大事なわけです。
これをやってないと、本当にパァーになります。
で、そういう真剣勝負をやっていると、小室さんや副島さんの本に目が行くようになるわけです。予言が当たってから「おおお、すごい!」となるのではなくて、予言が当たる前に「おおお、この本はすごい!」というのがわかるようになるんです。それは知識とかの問題ではなくて、身銭を切って本を買うかどうかが分かれ目なんです。
まぁファイル共有ソフトを使ってコンテンツ泥棒していて、で、Winnyを「技術発展の可能性がなくなる」とか言って擁護しているようなパァな人種は、ずーっと白痴なままなわけですよ。どこまで行っても。
それは、その人の「学ぶ姿勢」が崩れてるんだから、もともと話にならない、というだけの事なんですね。姿勢が崩れたら、それはもう何も積み上がらない。どうしようもないヘナヘナです。
最近は、その手の姿勢の崩れた人間がすごく増えたので、こういう悪い「空気」が消えてくれることを、本当に心から望みますね。まさに「空気」の悪い側面です。
しかし、学ぶ人は「空気」にとらわれずに、きちんと学んでいます。
小室直樹と副島隆彦は師弟関係ですが、上記の動画で司会をしている橋爪大三郎さんも小室直樹さんの弟子。橋爪さんの著作も1冊か2冊読みましたが、堂々たるものです。
まぁ同じく小室直樹の弟子の宮台真司は、援交を肯定したりして「おひおひ、それはちょっとまずくないか?」と思うこともあるので、同世代として情けない気もするんですが、まぁ、それでも概ねはまともな学問の基礎はできてるように思います。
で、副島さんの弟子筋にあたるのがこの間も紹介しましたけど、中田安彦さんとかだったりするわけで、最近は中田さんのブログがけっこう楽しみだし、ここに師弟関係の大きな、知の流れというものを感じるんですよね。
僕は上方落語が好きなんですが、上方落語の世界で言うなら、やはり米朝と枝雀。この師弟関係というものが、大きな柱のひとつでしょう。(松鶴・鶴瓶、文枝・三枝というのもあるけど、それは横に置いておきます。)で、江戸落語だと、まずは立川談志・志の輔の師弟が大きな柱かな。
で、文化はそういう師弟関係による継承で成り立っているところが、とても大きいと思います。
で、学ぶという事は、師を選ぶという事でもあって、その師を選ぶのだって図書館やらWinnyで泥棒してるだけでは絶対に無理なんですね。
なんでかというと、「自分を読む」という事ができないからです。
泥棒ソフトや無料の図書館だと「世間が勝手にやってくる」だけです。自分が「何を真剣に望んでいるのか?」という問いかけがとてもしにくいシステムなんです。
しかし、自分で本を買って読むということは、常に「私はこれを読みたいと思っているのか?」と自分に真剣に問いかけることが必要になってきます。
それが「市場にさらされる」という事の良い側面のひとつなわけです。(それがすべてとは言いませんが、効果は最も高いでしょう。)
そうやって、「自分を読む」という過程を通り抜けた後の素直な選択として「師を選ぶ」という行為があるわけです。
落語の世界で言うと、明石家さんま・笑福亭松之介という師弟も、さんまらしい師匠の選び方だなぁと感心するわけです。さんまは「自分を読む」のに長けてたんだろうなぁと思う。
僕が「ソビエト帝国の崩壊」「やがてアメリカ発の大恐慌が襲い来る」を「おもしろい!」と思ったのも、たぶん「これから世の中はどうなっていくのか?」ということにこそ、僕自身が興味を持っていたからでしょう。
だから、「自分を読む」という事ができないと、良い師を選べないんです。
特定の師を選ぶというのは、そういう「素直な自分」を含めた、真剣勝負の結果です。まぁ偶然出会うって事もありますけども。
小室先生も文化人類学を学ぶ際に、かの山口昌男を訪ねて、土下座した事があるらしいんですねぇ。まぁ山口さんが土下座に驚いて師事できなかったらしいですが。(笑)
でも、ここでも山口昌男という超大御所が出てくるところがすごい。
小室直樹さんというと、ちょっと極端なもの言いとかが取り上げられて、エキセントリックな人のように思われがちですが、実際には、超オーソドックスな方でして、どんな学問でも全部、まず基礎を大切にされますし、基礎文献や基本文献をこそ重視される方です。で、その基礎文献から、すごい発見をしたりするから、またすごいわけです。
上記の動画でも、日本のアマテラスオオミカミの神話と西洋の神話比較から、勤勉性というものの捉え方の日本と他国との大きな違いをつかみとってるのがすごい。
そういうエッセンスを紡ぎ出せるのは、まさに王道中の王道から、コツコツと積み重ねてきたからこそなわけで、そういう意味でも信用できるし尊敬できる、知の巨人だと思います。
この動画では、最後に橋爪大三郎さんが、「これからの日本にとって必要な事は?」という問いに「そんなのカンタンにわからないよ」と言いつつ「まぁまず海外の宗教をキチン基礎から学ぶことではないですか?」と答えられ「そういう初等向けの本でも書きますかな」と言っておられる。
小室先生、まだまだ軒昂。有り難いことです。
-------------------
せっかくなので、小室先生のご著書を紹介しておきましょう。
小室学の入門としては、
痛快!憲法学 ― Amazing Study of Constitution & Democracy
http://astore.amazon.co.jp/kids1226-22/detail/4797670312
日本人のための憲法原論
http://astore.amazon.co.jp/kids1226-22/detail/4797671459
がベストオブベストでしょう。この本を読んで衝撃を受けたという方はとても多いようですが、書かれていることは、基本的には「世界の常識」レベルの話です。
でも、それが「衝撃」になるというのが、日本の不幸なんですよねぇ。
宗教に関しては、
日本人のための宗教原論―あなたを宗教はどう助けてくれるのか
http://astore.amazon.co.jp/kids1226-22/detail/4198611688
が、すごく良かったです。この本なんかは、日本の高校の教科書とか課題図書にしても良いくらいに内容の良い本です。こういう世界の宗教観を知らずして、世界中のニュースを読み解く事もできません。
このあたりは、コツコツ学習する以外に手はないんですね。宗教というのは生きて行くことの基本的なルールや価値観の根っこですから。分っている者同士なら、「空気」と同じでよくわかるけど、他国の人間は、基礎からコツコツ学ぶ以外に手はありません。
そういう事です。
おおお、小室先生ですか、と言うことで拝聴いたしました。
http://video.google.com/videosearch?q=%E5%B0%8F%E5%AE%A4%E7%9B%B4%E6%A8%B9&hl=en&emb=0&aq=f#
小室先生のご著書は、いろいろ拝読してまして、ほんとうにすごい方で、とても尊敬してしまうわけですが、ではいったいどういう人なのか? というと経歴等は、僕は実は良く分かってなかったんですよ。
で、この動画の最初に小室先生の紹介がちょろっと入っていて、その紹介だけでもとんでもなくすごいので感心しました。
「本日は、法学博士であり、政治学者、経済学者でもある小室直樹さんをお招きしています。
小室さんは、1932年東京生まれ、京大で数学・物理学を学んだ後、大阪大学大学院で経済学を学び、その後アメリカへ留学し、(ミシガン大学大学院へフルブライト留学) 心理学・統計学・社会学を学んだ後、帰国後、人類学・法学・政治学を学ぶという非常に多彩な方です。」
と、こうなる。いや、しかし幅広い。
で、はたと気になってwikipediaを調べてみたわけですよ。すると、まぁなんちゅうか、やっぱり小室先生は、師事した先生がまたすげぇなと驚くことになりました。
政治学は丸山眞男から学んでるし、社会学はマックス・ヴェーバーの翻訳者、大塚久雄から直接教えを受けているし、社会人類学は川島武宜からと、王道中の王道というか、大御所ばっかりじゃん! すげーな、これはって思う。ああ、知らなんだ、という感じです。
アメリカ留学中だって、マサチューセッツ工科大学大学院(あのMITの大学院ですよ!)で、近代経済学の父と呼ばれるポール・サミュエルソン(オバマ政権の国家経済会議委員長を務めているローレンス・サマーズのおじさん)から学んでるし、ハーバード大学の大学院にも行ってる。まぁすごいっちゅうか、なんちゅうか、あれですな、超・超・超、スーパーハード勉強オタクって感じですわね。
で、さて動画の内容は、というと、これが日本教とはなんぞやという話し。
日本人がネイティブにもっている宗教観を「日本教」と名付けたのは、イザヤ・ベンダサンこと「日本人とユダヤ人」を書いた山本七平さんですが、小室先生は、この山本七平さんの後押しもあって、かの「ソビエト帝国の崩壊」を出版されたわけです。
なので、小室先生も、基本的に「日本教」ということに関しては深く研究されておられて、その内容は、この動画を見る限り山本七平の考え方を受け継いだ上で、それを越えるほどに深まっているなぁと感心する内容でありました。
「空気読めよ」のKYという言葉も、結局は、『「空気」の研究』を書いた山本七平さんの業績がベースになっているのであって、小室先生もまた、その業績の上に、より高い見地を求めておられるようです。この動画の中でも「空気」というものの怖さを論じておられますね。
山本七平さんの著書の数々を、僕は読んでないわけですが、それでも山本さんの考え方に通じている人たちは山本学派と呼ばれているくらいで日本人による日本人研究の、非常に重要な学派だということは言えるでしょう。
ちなみに、僕は「ソビエト帝国の崩壊」を1980年の初版時に読んでまして、すごく面白く読んだんですが、これがその後、本当にソ連が崩壊(1991年)してしまいまして、その崩壊の過程を、実に見事に10年以上前に言い当ててたということで、小室さんの評価が、ますます高まったという事なんですね。
でもって、僕がよく話題に出す副島隆彦さんは、この小室直樹さんの弟子筋にあたる人でして、副島さんも、アメリカ経済の崩壊を、5年も前から崩壊の過程まで含めて言い当てていたということで、いまや大注目の言論人になってしまいました。
師弟ともに「予言」して当ててしまってるわけです。それもかなり規模の大きな予測を。
この間も、梅田の旭屋書店に行ったら、副島さんの新刊の『日米「振り込め詐欺」大恐慌』が店頭の一番目立つところにずららららーと並んでいて、「ああ、いい扱いをしてもらえるようになったんだなぁ」と、感慨深かったです。(って言いつつこの本は買ってないし読んでないんですがね。)
副島さんがアメリカ経済崩壊を言い当てた「やがてアメリカ発の大恐慌が襲いくる」は、この日記でも5年前に紹介してます。
http://12917.diarynote.jp/?month=200404
しかし、いま読んでも感心するけど、僕、ものすごく勧めてるんですよねぇ、この本を。
副島隆彦の、他のどの本でもなく、この「やがてアメリカ発の大恐慌が襲いくる」を勧めてる。我ながら感心してしまいますな。
で、小室先生も、まず何より「ソビエト帝国の崩壊」がおもしろかったんですよね。とにかくそれだけ内容がズバ抜けていたわけです。超飛抜けて面白かったんですよ。1980年当時は。
僕は本が好きで、よく読みますが、とにかく週に6日くらいは本屋に寄るわけですよ。で、チラチラチラと表紙を見て、気になる本だけをパラパラとページをめくって見ていくわけですね。
で、興味が出たら買うけど、興味が湧かなかったら買わない。
で、上記の「ソビエト」も「アメリカ」も、手にしてパラパラっと見ただけで「わ、面白そう!」だったわけですわ。
そういうのはね、もう、本の方が光り輝いてるというか、語りかけて来るというか、そういうのがあるんですね。
これは週6日、本屋に行ったら、誰でも自然と身に付きます。全然違うねんもん、内容が。まったく。まるきり。ズバ、抜けている。
せこい話ですが、本を買うっちゅうことは、自分でお金を出す、ということで、買う時に、ものすごく逡巡するわけですよ。「買って損せんかなぁ」とか。
ここが、ものすごく大事でね。
こういう発想は図書館で本を借りてたら絶対に身に付かないんです。だから本は買うのが大切。
(今後、情報はどんどん「お金を出さないと有用なものが得られない」という方向になっていくと思います。無料は基本的にダメ。名前やメアドを登録するタイプのは、まだちょっとマシ。それは自分のメアドを「売った」という事なんですよね。だから、まぁ数十円の価値はある。でもその程度です。で、自分で金を出すからこそ、そこではじめて、「自分にとって本当に必要な情報」が、「自分で納得できる」となるんです。なので図書館で本を借りたりしたりしてるだけでは、まず「自分が納得できる情報」が得られないです。まぁそれでも良いという人はそれでも良いのですが。)
で、上記の「アメリカ本」も「ソビエト本」も、「うわー、絶対読みたいわ、これ。」という内容だったわけです。喜んで金を払った。そういう事ですね。それだけ優れてたんです。
本屋でお金を出して本を買ってたら、そういう事は一発でわかるようになります。なんせ、自分の身銭を切ってるわけですから。
逆に言うと、ここで身銭を切らないと、何も身に付きません。一切身に付きません。それは確実であります。絶対と言っていいでしょう。
まぁそういうものです。
よくWinnyとかのファイル共有ソフトで、動画や音楽ファイルをタダで泥棒している人がいてますが、こういう「価格対内容比」を真剣に検討する機会を、自ら失わせている人という事で、まぁほとんど白痴の行為ではないでしょうかね。なんというバカでムダな事をしておるのか、と思う。
タダだと真剣にチョイスせんじゃないか!
それでは「読者としての能力」が、いつまでたっても身に付かないのでありますよ。「良いモノを見抜く力」ですね。それが身に付かないのなら、本を読んだり、音楽を聴いたり、映画を見たりしても全然意味がない。質の低いものをただダラダラと見てても、あんまり感動しないのになぁと思うだけなのであります。
一冊1500円くらいの本を、まぁ月に5冊くらいで7~8千円です。4冊しか読めなかったら6千円くらい。年間で100冊、7~8万円くらいですね。やっぱりそのくらいは読みたいし、投資して損はないです。超お得ですから。毎月6千円をどんな情報に投資するのか? を真剣勝負で考える。これが大事です。週5~6日書店に行って、買わなくともパラパラと一回に2~3冊はチェックしますから、月に数十冊はチェックした上で4~5冊を選ぶわけです。その真剣に選ぶ行為が大事なわけです。
これをやってないと、本当にパァーになります。
で、そういう真剣勝負をやっていると、小室さんや副島さんの本に目が行くようになるわけです。予言が当たってから「おおお、すごい!」となるのではなくて、予言が当たる前に「おおお、この本はすごい!」というのがわかるようになるんです。それは知識とかの問題ではなくて、身銭を切って本を買うかどうかが分かれ目なんです。
まぁファイル共有ソフトを使ってコンテンツ泥棒していて、で、Winnyを「技術発展の可能性がなくなる」とか言って擁護しているようなパァな人種は、ずーっと白痴なままなわけですよ。どこまで行っても。
それは、その人の「学ぶ姿勢」が崩れてるんだから、もともと話にならない、というだけの事なんですね。姿勢が崩れたら、それはもう何も積み上がらない。どうしようもないヘナヘナです。
最近は、その手の姿勢の崩れた人間がすごく増えたので、こういう悪い「空気」が消えてくれることを、本当に心から望みますね。まさに「空気」の悪い側面です。
しかし、学ぶ人は「空気」にとらわれずに、きちんと学んでいます。
小室直樹と副島隆彦は師弟関係ですが、上記の動画で司会をしている橋爪大三郎さんも小室直樹さんの弟子。橋爪さんの著作も1冊か2冊読みましたが、堂々たるものです。
まぁ同じく小室直樹の弟子の宮台真司は、援交を肯定したりして「おひおひ、それはちょっとまずくないか?」と思うこともあるので、同世代として情けない気もするんですが、まぁ、それでも概ねはまともな学問の基礎はできてるように思います。
で、副島さんの弟子筋にあたるのがこの間も紹介しましたけど、中田安彦さんとかだったりするわけで、最近は中田さんのブログがけっこう楽しみだし、ここに師弟関係の大きな、知の流れというものを感じるんですよね。
僕は上方落語が好きなんですが、上方落語の世界で言うなら、やはり米朝と枝雀。この師弟関係というものが、大きな柱のひとつでしょう。(松鶴・鶴瓶、文枝・三枝というのもあるけど、それは横に置いておきます。)で、江戸落語だと、まずは立川談志・志の輔の師弟が大きな柱かな。
で、文化はそういう師弟関係による継承で成り立っているところが、とても大きいと思います。
で、学ぶという事は、師を選ぶという事でもあって、その師を選ぶのだって図書館やらWinnyで泥棒してるだけでは絶対に無理なんですね。
なんでかというと、「自分を読む」という事ができないからです。
泥棒ソフトや無料の図書館だと「世間が勝手にやってくる」だけです。自分が「何を真剣に望んでいるのか?」という問いかけがとてもしにくいシステムなんです。
しかし、自分で本を買って読むということは、常に「私はこれを読みたいと思っているのか?」と自分に真剣に問いかけることが必要になってきます。
それが「市場にさらされる」という事の良い側面のひとつなわけです。(それがすべてとは言いませんが、効果は最も高いでしょう。)
そうやって、「自分を読む」という過程を通り抜けた後の素直な選択として「師を選ぶ」という行為があるわけです。
落語の世界で言うと、明石家さんま・笑福亭松之介という師弟も、さんまらしい師匠の選び方だなぁと感心するわけです。さんまは「自分を読む」のに長けてたんだろうなぁと思う。
僕が「ソビエト帝国の崩壊」「やがてアメリカ発の大恐慌が襲い来る」を「おもしろい!」と思ったのも、たぶん「これから世の中はどうなっていくのか?」ということにこそ、僕自身が興味を持っていたからでしょう。
だから、「自分を読む」という事ができないと、良い師を選べないんです。
特定の師を選ぶというのは、そういう「素直な自分」を含めた、真剣勝負の結果です。まぁ偶然出会うって事もありますけども。
小室先生も文化人類学を学ぶ際に、かの山口昌男を訪ねて、土下座した事があるらしいんですねぇ。まぁ山口さんが土下座に驚いて師事できなかったらしいですが。(笑)
でも、ここでも山口昌男という超大御所が出てくるところがすごい。
小室直樹さんというと、ちょっと極端なもの言いとかが取り上げられて、エキセントリックな人のように思われがちですが、実際には、超オーソドックスな方でして、どんな学問でも全部、まず基礎を大切にされますし、基礎文献や基本文献をこそ重視される方です。で、その基礎文献から、すごい発見をしたりするから、またすごいわけです。
上記の動画でも、日本のアマテラスオオミカミの神話と西洋の神話比較から、勤勉性というものの捉え方の日本と他国との大きな違いをつかみとってるのがすごい。
そういうエッセンスを紡ぎ出せるのは、まさに王道中の王道から、コツコツと積み重ねてきたからこそなわけで、そういう意味でも信用できるし尊敬できる、知の巨人だと思います。
この動画では、最後に橋爪大三郎さんが、「これからの日本にとって必要な事は?」という問いに「そんなのカンタンにわからないよ」と言いつつ「まぁまず海外の宗教をキチン基礎から学ぶことではないですか?」と答えられ「そういう初等向けの本でも書きますかな」と言っておられる。
小室先生、まだまだ軒昂。有り難いことです。
-------------------
せっかくなので、小室先生のご著書を紹介しておきましょう。
小室学の入門としては、
痛快!憲法学 ― Amazing Study of Constitution & Democracy
http://astore.amazon.co.jp/kids1226-22/detail/4797670312
日本人のための憲法原論
http://astore.amazon.co.jp/kids1226-22/detail/4797671459
がベストオブベストでしょう。この本を読んで衝撃を受けたという方はとても多いようですが、書かれていることは、基本的には「世界の常識」レベルの話です。
でも、それが「衝撃」になるというのが、日本の不幸なんですよねぇ。
宗教に関しては、
日本人のための宗教原論―あなたを宗教はどう助けてくれるのか
http://astore.amazon.co.jp/kids1226-22/detail/4198611688
が、すごく良かったです。この本なんかは、日本の高校の教科書とか課題図書にしても良いくらいに内容の良い本です。こういう世界の宗教観を知らずして、世界中のニュースを読み解く事もできません。
このあたりは、コツコツ学習する以外に手はないんですね。宗教というのは生きて行くことの基本的なルールや価値観の根っこですから。分っている者同士なら、「空気」と同じでよくわかるけど、他国の人間は、基礎からコツコツ学ぶ以外に手はありません。
そういう事です。
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