乗る十字カーソル
2008年2月23日
ふと思いついて、Wii fit を買いました。「板です。」のコマーシャルで有名なゲーム機Wiiにつなげて体重を図ったり、体移動によるバランスでのゲームをしたりするツールです。
●Wii Fit
http://www.nintendo.co.jp/wii/rfnj/index.html
去年は2月から12月まで、けっこう長く、続けて筋トレをやってたんですが、どういうわけか、この1、2ヶ月、さぼりっぱなしだったんですね。で、まぁ、せっかくついた筋肉が完全に落ちてしまってるし、また最初からやり直しするのに、このWiiFitがちょうどいいやと思って買ったわけですが、思ってたより、かなり良くて気に入ってます。
3Dのトレーナーが登場して、その真似をする「ヨガ」「筋トレ」メニューと、「バランスWiiボード」の上で体重移動をして遊ぶゲーム「有酸素運動」「バランスゲーム」の四つのメニューになってるんですが、メニュー構成がなかなか良いバランスで感心しました。
筋肉トレーニングにしても、ソフト内トレーナーが、動きを解説してくれたり、ボードでこちらの動きをチェックしつつ、「ふらついてますよ。」とか、「とてもきれいな姿勢です。」とか声をかけてくれるので、まさに専任のトレーナーに習ってる感じです。
やはり感心したのは、「バランスWiiボード」という装置の新しさですね。単純に言ってしまえば、「乗る十字カーソル」。ファミコンのコントローラーについている、十字カーソルをアナログ対応にして床に置いたような感じと言えばいいのでしょうか。板の脚部4箇所にセンサがついていて、それで重心の移動や、100g単位での重量の変化まで読み取れる高精度高機能体重計になってるわけですが、それをそのままゲームのコントロール機器として使えるというわけです。
これはなかなか面白いと思います。
ちょっと話は外れますが、僕はWiiを、
●テレビマウス
と呼んでます。この「テレビマウス機能」がすごいと思うんですね。十字カーソル以来の大発明だ、って思う。触った人にしかわからないですけど、Wiiのコントローラーは、テレビ画面上のボタンに触れると、リモコン本体がプルッ!と震えるんですね。その振動がすごい。リモコンという使い慣れたユーザーインターフェースにマウスの機能を完全に上乗せしていて「テレビマウス」と言うのがぴったりな環境を作り出してるんです。
(家電メーカーのリモコンが全部に、こういうテレビマウス機能を付けて欲しいくらいです。)
で、今度のバランスWiiボードは、
●乗る十字カーソル
と呼ぶ事にしました。体重を量ったり、スポーツトレーニングをするため用に開発されたツールと思われてますが、それ以上に「ゲームの入力機器」として、潜在的なポテンシャルが相当に高いという気がします。(解る人にしか解らない書き方になりますが、ヌンチャクの代わりにバランスWiiボードでキャラクタ移動が出来るfpsとか作ったら、すごく面白いのでは? と思う。)
で、こういう事を見ていて、つくづく感じるのは、「任天堂はやっぱりハードメーカーだよなぁ」って事です。
任天堂の先代社長の山内さんは「うちはソフトこそが命や」みたいな事をずっと言うてはりましたが、それは「自分の事が一番見えていない」という事の代表例でして、任天堂はやっぱり「ハードを売るために活動している会社」というのは、動かしがたい事実なんですね。で、そのハードを売るために「ソフト」を大切にしている、というだけで、本質はハード屋さんなんです。
このあたりは、ソフト専業の映画業界とか出版業界とはまったく違うところでして、まぁ言うたらなんですけど、任天堂にそういうソフト専業のところが生み出す「ドラマ性」と戦えるだけの、上質なソフトを生み出す力はありません。そういう能力は任天堂には、まったくない。それはきっぱり言えます。(この「ドラマ」については、そのうち。)
実際長い任天堂の歴史をふり返っても、ようは「モノ売り」の会社なんだ、という事がはっきりします。以下の商品群がそれ。
●ウルトラ三部作
ウルトラハンド(折りたたみ式遠隔物取り機)
ウルトラマシーン(家庭用ピッチングマシーン)
ウルトラスコープ(潜望鏡風のぞき見おもちゃ)
●ラブテスター
●光線銃
googleのイメージ検索とかかけてみてください。
全部「ゲーム性」は入れてあるけど、「文化の対立」みたいなドラマ性は皆無。「表現メディアとしてのゲーム」は、もともと作れない会社なんだなぁって、今回つくづく思いました。
大人向けの「価値観の対立によるドラマ性」とか、そういう高度な表現とかは、もともとできない会社なわけです。ハードを売るのが本筋のメーカーだから。そこまで高度な事をやっても意味がないってことですね。ハードを売るための「お話」があれば、それでよろしい程度なわけで。良くも悪くも、それこそが任天堂の「企業文化」なんだろうと思います。
その代わり、モノづくりへの追求は徹底してますからね。子供が遊ぶと言うことを前提にしていて、壊れにくい構造にするとか、低価格で効果的なものを作るとかにかけては天才的だなと思います。
社長がいまの岩田さんに替わってから、ずっと任天堂の動向はウォッチしていて、「おもしろいなぁ」と思うのは、任天堂社長である岩田さんが、開発陣の現場の人、ひとりひとりにインタビューすることで、開発の裏話を公開する「社長が訊く」のシリーズなんですね。こういう事をするところが、岩田社長の希有な個性なんですが、
●社長が訊くシリーズ
社長が訊く Wii プロジェクト - Vol.1 Wii ハード編
http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol1/index.html
社長が訊く Wii プロジェクト - Vol.2 Wii リモコン編
http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol2/index.html
社長が訊く Wii プロジェクト - Vol.3 Wii チャンネル編
http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol3/index.html
社長が訊く Wii プロジェクト - 番外編 (社長「に」訊くですな、これは。)
http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol_ext/index.html
社長が訊く Wii プロジェクト - Vol.4 『Wii Sports』編
http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol4/index.html
社長が訊く Wii プロジェクト - Vol.5 『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』編http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol5/index.html
社長が訊く Wii プロジェクト - Vol.6 『おどる メイド イン ワリオ』編
http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol6/index.html
Wii.com JP - 社長が訊く『スーパーマリオギャラクシー』
http://wii.com/jp/articles/mario-galaxy/crv/vol1/index.html
Wii.com JP - 社長が訊く『Wii Fit』
http://wii.com/jp/articles/wii-fit/crv/vol1/index.html
Wii.com JP - 社長が訊く『大乱闘スマッシュブラザーズX』
http://wii.com/jp/articles/smashbros/crv/vol1/index.html
これをずっと読んでいて、つくづく思うのは、スーパーマリオの開発者である宮本さんは、もともとがインダストリアルデザインをやっていた人で、どこまで行っても「モノづくり」の人なんだなぁって事でした。
ゼルダの伝説なんて、開発の最後でシナリオをひっくり返して(無視して、です)構成を変えてしまってるんですね。操作性を優先して。
でも、こんな事、映画業界の製作の流れとかが頭にあったら、あり得ないですからね。こんな事をしたらアカンわな。つまり宮本さんがこういう事をしてる限り、任天堂からドラマ性のあるソフトは生まれ得ないって事です。(はっきり宮本さんがガンです。僕はこの「社長が訊く」シリーズを読んで確信しました。これでは、シナリオライターの立つ瀬がない。宮本さんは最低です。スターウォーズのジョージ・ルーカスをはじめ、ハリウッドがいかにシナリオを重視してるかを、ちょっとは学んで欲しいと思う。で、一般人もみんな、シナリオとかストーリーに興味を持つのが普通なんだって事は頭に置いて欲しいなぁと思う。ストーリー無視してゲームできるのは、ゲーム依存症のオタクだけですよ。これはキッパリと言いたい。オタクしか相手にしなかったからニンテンドー64は失敗したのだと、いまは明確に言えると思う。)
でも、それは逆に言えば、モノづくりに関してはものすごく天才的だって事でもあります。そういう意味で、今回のWiiにせよWiiFitにせよ、ウルトラ三部作、ラブテスター、光線銃、ゲームウォッチに続く、「任天堂のモノづくりのDNA」が遺憾なく発揮された製品だって事が言えると思うのですよ。画期的で天才的で、それは任天堂の企業文化からこそ生まれたものだと思います。
ともあれ、世界に冠たる「ハードメーカー」任天堂だからこそ生み出せたWiiFitは、実におもしろいです。
WiiSportsなんて、全然運動効果なんかないけど、WiiFitは、効果高いと思う。なんせ、ありきたりに腹筋と腕立て伏せですから。その他の運動ゲームやヨガもなかなか良いです。こういうバランスの良い組合せがうまい。WiiFitを肩幅サイズに決めた宮本さんもインダストリアルデザイナーとしての本領を実に上手く発揮してると思う。
宮本さんには、こういう事だけさせとくのが良いと思うなぁ。ストーリーをどうのこうのさせる権限を与えてはイカンですよ。役割分担がうまくいかない。やめたほうがいい。あ、これは岩田さんの仕事か。
ま、ともあれ、WiiFitは面白いです。はい。
●Wii Fit
http://www.nintendo.co.jp/wii/rfnj/index.html
去年は2月から12月まで、けっこう長く、続けて筋トレをやってたんですが、どういうわけか、この1、2ヶ月、さぼりっぱなしだったんですね。で、まぁ、せっかくついた筋肉が完全に落ちてしまってるし、また最初からやり直しするのに、このWiiFitがちょうどいいやと思って買ったわけですが、思ってたより、かなり良くて気に入ってます。
3Dのトレーナーが登場して、その真似をする「ヨガ」「筋トレ」メニューと、「バランスWiiボード」の上で体重移動をして遊ぶゲーム「有酸素運動」「バランスゲーム」の四つのメニューになってるんですが、メニュー構成がなかなか良いバランスで感心しました。
筋肉トレーニングにしても、ソフト内トレーナーが、動きを解説してくれたり、ボードでこちらの動きをチェックしつつ、「ふらついてますよ。」とか、「とてもきれいな姿勢です。」とか声をかけてくれるので、まさに専任のトレーナーに習ってる感じです。
やはり感心したのは、「バランスWiiボード」という装置の新しさですね。単純に言ってしまえば、「乗る十字カーソル」。ファミコンのコントローラーについている、十字カーソルをアナログ対応にして床に置いたような感じと言えばいいのでしょうか。板の脚部4箇所にセンサがついていて、それで重心の移動や、100g単位での重量の変化まで読み取れる高精度高機能体重計になってるわけですが、それをそのままゲームのコントロール機器として使えるというわけです。
これはなかなか面白いと思います。
ちょっと話は外れますが、僕はWiiを、
●テレビマウス
と呼んでます。この「テレビマウス機能」がすごいと思うんですね。十字カーソル以来の大発明だ、って思う。触った人にしかわからないですけど、Wiiのコントローラーは、テレビ画面上のボタンに触れると、リモコン本体がプルッ!と震えるんですね。その振動がすごい。リモコンという使い慣れたユーザーインターフェースにマウスの機能を完全に上乗せしていて「テレビマウス」と言うのがぴったりな環境を作り出してるんです。
(家電メーカーのリモコンが全部に、こういうテレビマウス機能を付けて欲しいくらいです。)
で、今度のバランスWiiボードは、
●乗る十字カーソル
と呼ぶ事にしました。体重を量ったり、スポーツトレーニングをするため用に開発されたツールと思われてますが、それ以上に「ゲームの入力機器」として、潜在的なポテンシャルが相当に高いという気がします。(解る人にしか解らない書き方になりますが、ヌンチャクの代わりにバランスWiiボードでキャラクタ移動が出来るfpsとか作ったら、すごく面白いのでは? と思う。)
で、こういう事を見ていて、つくづく感じるのは、「任天堂はやっぱりハードメーカーだよなぁ」って事です。
任天堂の先代社長の山内さんは「うちはソフトこそが命や」みたいな事をずっと言うてはりましたが、それは「自分の事が一番見えていない」という事の代表例でして、任天堂はやっぱり「ハードを売るために活動している会社」というのは、動かしがたい事実なんですね。で、そのハードを売るために「ソフト」を大切にしている、というだけで、本質はハード屋さんなんです。
このあたりは、ソフト専業の映画業界とか出版業界とはまったく違うところでして、まぁ言うたらなんですけど、任天堂にそういうソフト専業のところが生み出す「ドラマ性」と戦えるだけの、上質なソフトを生み出す力はありません。そういう能力は任天堂には、まったくない。それはきっぱり言えます。(この「ドラマ」については、そのうち。)
実際長い任天堂の歴史をふり返っても、ようは「モノ売り」の会社なんだ、という事がはっきりします。以下の商品群がそれ。
●ウルトラ三部作
ウルトラハンド(折りたたみ式遠隔物取り機)
ウルトラマシーン(家庭用ピッチングマシーン)
ウルトラスコープ(潜望鏡風のぞき見おもちゃ)
●ラブテスター
●光線銃
googleのイメージ検索とかかけてみてください。
全部「ゲーム性」は入れてあるけど、「文化の対立」みたいなドラマ性は皆無。「表現メディアとしてのゲーム」は、もともと作れない会社なんだなぁって、今回つくづく思いました。
大人向けの「価値観の対立によるドラマ性」とか、そういう高度な表現とかは、もともとできない会社なわけです。ハードを売るのが本筋のメーカーだから。そこまで高度な事をやっても意味がないってことですね。ハードを売るための「お話」があれば、それでよろしい程度なわけで。良くも悪くも、それこそが任天堂の「企業文化」なんだろうと思います。
その代わり、モノづくりへの追求は徹底してますからね。子供が遊ぶと言うことを前提にしていて、壊れにくい構造にするとか、低価格で効果的なものを作るとかにかけては天才的だなと思います。
社長がいまの岩田さんに替わってから、ずっと任天堂の動向はウォッチしていて、「おもしろいなぁ」と思うのは、任天堂社長である岩田さんが、開発陣の現場の人、ひとりひとりにインタビューすることで、開発の裏話を公開する「社長が訊く」のシリーズなんですね。こういう事をするところが、岩田社長の希有な個性なんですが、
●社長が訊くシリーズ
社長が訊く Wii プロジェクト - Vol.1 Wii ハード編
http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol1/index.html
社長が訊く Wii プロジェクト - Vol.2 Wii リモコン編
http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol2/index.html
社長が訊く Wii プロジェクト - Vol.3 Wii チャンネル編
http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol3/index.html
社長が訊く Wii プロジェクト - 番外編 (社長「に」訊くですな、これは。)
http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol_ext/index.html
社長が訊く Wii プロジェクト - Vol.4 『Wii Sports』編
http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol4/index.html
社長が訊く Wii プロジェクト - Vol.5 『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』編http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol5/index.html
社長が訊く Wii プロジェクト - Vol.6 『おどる メイド イン ワリオ』編
http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol6/index.html
Wii.com JP - 社長が訊く『スーパーマリオギャラクシー』
http://wii.com/jp/articles/mario-galaxy/crv/vol1/index.html
Wii.com JP - 社長が訊く『Wii Fit』
http://wii.com/jp/articles/wii-fit/crv/vol1/index.html
Wii.com JP - 社長が訊く『大乱闘スマッシュブラザーズX』
http://wii.com/jp/articles/smashbros/crv/vol1/index.html
これをずっと読んでいて、つくづく思うのは、スーパーマリオの開発者である宮本さんは、もともとがインダストリアルデザインをやっていた人で、どこまで行っても「モノづくり」の人なんだなぁって事でした。
ゼルダの伝説なんて、開発の最後でシナリオをひっくり返して(無視して、です)構成を変えてしまってるんですね。操作性を優先して。
でも、こんな事、映画業界の製作の流れとかが頭にあったら、あり得ないですからね。こんな事をしたらアカンわな。つまり宮本さんがこういう事をしてる限り、任天堂からドラマ性のあるソフトは生まれ得ないって事です。(はっきり宮本さんがガンです。僕はこの「社長が訊く」シリーズを読んで確信しました。これでは、シナリオライターの立つ瀬がない。宮本さんは最低です。スターウォーズのジョージ・ルーカスをはじめ、ハリウッドがいかにシナリオを重視してるかを、ちょっとは学んで欲しいと思う。で、一般人もみんな、シナリオとかストーリーに興味を持つのが普通なんだって事は頭に置いて欲しいなぁと思う。ストーリー無視してゲームできるのは、ゲーム依存症のオタクだけですよ。これはキッパリと言いたい。オタクしか相手にしなかったからニンテンドー64は失敗したのだと、いまは明確に言えると思う。)
でも、それは逆に言えば、モノづくりに関してはものすごく天才的だって事でもあります。そういう意味で、今回のWiiにせよWiiFitにせよ、ウルトラ三部作、ラブテスター、光線銃、ゲームウォッチに続く、「任天堂のモノづくりのDNA」が遺憾なく発揮された製品だって事が言えると思うのですよ。画期的で天才的で、それは任天堂の企業文化からこそ生まれたものだと思います。
ともあれ、世界に冠たる「ハードメーカー」任天堂だからこそ生み出せたWiiFitは、実におもしろいです。
WiiSportsなんて、全然運動効果なんかないけど、WiiFitは、効果高いと思う。なんせ、ありきたりに腹筋と腕立て伏せですから。その他の運動ゲームやヨガもなかなか良いです。こういうバランスの良い組合せがうまい。WiiFitを肩幅サイズに決めた宮本さんもインダストリアルデザイナーとしての本領を実に上手く発揮してると思う。
宮本さんには、こういう事だけさせとくのが良いと思うなぁ。ストーリーをどうのこうのさせる権限を与えてはイカンですよ。役割分担がうまくいかない。やめたほうがいい。あ、これは岩田さんの仕事か。
ま、ともあれ、WiiFitは面白いです。はい。
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