ISBN:4198620202 単行本 井沢 元彦 徳間書店 2005/06/30 ¥1,575

いやー、おもしろかった。
これはもう日本人全員、必読の書だなぁ。

こういう本が読みたかったのですよ私は。
このクソ忙しいのに実質二日くらいで読み終えてしまった。

いやまぁ知ってる事もすごく多かったので読みやすかったというのもあるんだけど、とにかく日本人の「宗教心」や「道徳心」の中核を成す原理「仏教」「神道」「儒教」のことが、一気に一度に整理された形で、たった一冊で、しかもたかだか250頁程度でわかってしまうってのはすごいのではないかと思う。

井沢さんの書く本は、昔は過激な表現とかけっこうしていたので、そこをおもしろがってたところもあったんだけど、最近は僕自身も考え方がいろいろと多面的になってきたので、「井沢さん、内容はいいけど言い方がキツイからなぁ」とか思って、ちょっと敬遠してたところがあった。

でもこの本を読んでみると、昔とはずいぶん違う。

へー。

と思った。
なんて言うんでしょうか、「伝えなくちゃいけないことがあるから、とにかくそれから順に書く。あんまりカッカしてるヒマはない」って感じだ。内容は濃いんだけど、とにかく無駄なくさらりと日本人に関わる各種宗教の全体をザーッと解説してくれてます。

実にわかりやすい。
良いです。とても。

仏教にしても、インドの仏陀の教えのその前のインド哲学あたりから、中国を通って日本に渡って、日本国内で最澄やら空海、日蓮などにより、いかに「変質」してきたのかをバーーーーッと概観できていい。

阿弥陀如来信仰とはなにかとか、実によくわかった。私、自分ちが「浄土真宗」なのに、どういう教えの宗教なのか良くわかってなかったですよ。いやまぁ「浄土真宗」だから、そうなるんだけど。そうか、私は阿弥陀様の「浄土」へと「往生」する宗教に属してたんだ。

こういうことに気づくことすら、しないで済むというのが、いまの日本の宗教の危機的状況そのものなんだと思うのだけども、まぁあ、それはいい。

それより実はもっと大きな問題が、いまの日本人、なにが「仏教」で、何が「神道」で、何が「儒教」なのかすら、さーっぱりわかってないってことです。

考え方の違い自体を区別する知識すらない。そういうことですわ。
わかってない。というかわかる術がないんですがね。

もともと日本の歴史において仏教と神道はごちゃ混ぜにされてきてたしね。それに加えて儒教まで一緒くたに食べてしまってるんだから、そら食い合わせの悪いところもでるわなぁ。

だから、こうして、考え方の違いを明確に記述してくれてる本はありがたいのですよ。何せ無意識のレベルにまで刷り込まれてるのが、「宗教」って奴のやっかいなところですからなぁ。

ちゃんとこんがらがってる糸をていねいに解きほぐして、それぞれの色の糸としてキチンと対応するべきですわ。

もうずっと前から、日本の自殺者がやたらと増えていて、それは欧米のさまざまな考え方をいきなりわかったつもりで取り入れては消化しきれず、個人の心の中で矛盾が起きてしまっていることというのが、そうとうに大きいと私は思っていたのだけれど、考えてみれば、自分たちの生活の中に根付いてしまってる「仏教」と「神道」と「儒教」の違いもわかってないんだから、そら混乱するわなぁ。

僕はもともとずーっと「シントイスト」だと思ってたんだけど、それを自覚するためには、神道にある祟りや穢れの概念がいかに強烈に自分の意識の中に刷り込まれてしまっているのかを客観的に捉えなきゃ無理なわけですね。

で、僕はそれを自覚するためにキリスト教(プロテスタントやカソリック)やらユダヤ教やら、日本の葬式仏教ではない本来の仏教の基礎やらを、ちょっとずつ学んできたんですが。(自論の正しさを証明するには、適切な反論がどうしても必要なんです。ここがわかってない人が多いからなぁ。日本人は。)

いや、こういう本が最初からあれば、そんな手間なことしなくて済んだんじゃないかって思うなぁ。

ホントは井沢さんみたいな作家が論じるのではなくて、それこそ「葬式仏教」しかやれてない、腐った「日本仏教界」がトータルな「宗教学」でも構築するのが筋なわけですよ。本来は。

ところが宗教家の誰もそういうことを、しやがらない。
なめとんか、おまえらは、と僕は思うのですよ。
自殺者が3万人も毎年出てるのに、それをなんとかしようとは思わないのか、この怠け者が。と思う。本当にひどい。

しかしまぁ、それも徳川300年の檀家制度が悪いのか。しゃーないかなぁ。と、わからせてくれるのも、この本なわけです。ははぁ本地垂迹説ですか。はいはい。ははぁ廃仏毀釈ね。ああなるほど。てなもんで。

ま、私的には自分の心の問題の袋小路度合いが、いかにこんがらがってしまってるのかがハッキリわかった分、逆に「うぇー、どないしよ。」と頭を抱えて座り込みたくなってしまいますが、まぁ、普通の人は「そういうことやったんか、なるほどぉ。」とハッキリスッキリして心の澱みがグンと減ること請け合いです。

いま、もめてる靖国問題のことだって、問題の本質が、一気にパッとわかっちゃうよー。この本読まずにゴチャゴチャ言っててもだめでしょ、って感じ。ほんと。マジに。

おすすめします。
ぜひぜひ、多くの方に読んでもらいたい本ですな。

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