ISBN:4334032761 新書 齋藤 孝 光文社 2004/11/13 ¥735

今をときめく齋藤孝さんの本。
福沢諭吉について書かれているので一気に読めた。

齋藤孝さんの本は何冊も買っていて、子育て論にせよ、三色ボールペン読書法にせよ、素晴らしいと感激するんだけど、どういうわけか、いつも途中で読まなくなる。読了できたのは、この本がはじめて。

なんでなんかなぁと考えてみるに、基本的に私、この人と考え方がとても近いのだと思うのですね。だからあんまり新鮮に感じないんだと思う。

でも、この本は違った。
福沢諭吉という人に齋藤さんはあこがれていて、その気持ちの持ち方が楽しかったのだ。
だから最後まで読めた。

あこがれる力の重要性は、齋藤孝さんの他の書籍にも出てくるからそれはそれでいいのだけれど、この本では、そのあこがれが素直に、かつ冷静で論理的に語られているのが飽きなかったところかもしれない。

人間は生きている。
当たり前だが、生きている。

であるなら、やはり日々成長するのが楽しい。

何かが上手になるとか、自分独自の哲学を深めるとか、いや、単に同じ失敗をしなくなるというだけでもいい。

少し成長できると毎日が楽しくなるし、うんと自分を好きになれる。

で、「あこがれ」があると、その力はもっと大きくなる。今日より明日自分はもっと素敵に、素晴らしい人になれる。そう思える力がたくさん湧いてくる。それが「あこがれ」の人がいてる良さで、こういう気持ちはとても大切なものだ。

あこがれる対象が父親だったり母親だったりする人はとても幸せだと思う。そこに超えるべき「良き目標」があるのだから。

しかし不幸にして両親を上手に尊敬できない人もいるだろうし、どっちかというと「そんなの尊敬できないよ」という人のほうが多いというのが現実なのかもしれない。

でもそう言うときにこそ、「偉人伝」は重要なんだと思う。「いかに生きるか」なんてことは10代や20代では簡単には考えを深められないと思うのだ。本当に素晴らしい両親を持った人以外は。

だからこの齋藤孝さんの「座右の諭吉」は良い本なんだと思う。人は「偉人伝」によって良い目標を手に入れることができるのだ。なんと素敵なことだろうか。誰だって良い生き方を簡単に手に入れられるのだから。

自分の不幸を嘆くのは簡単で、たいていの人は何の努力もしないで嘆きの中で人生を終える。

しかし、偉人伝とか、素敵だなと思える人の話をよく、しっかりと聞けば、同じような不幸の星のもとに生まれながら、その逆境を乗り越える人もいればただ逆境に流されるだけの人もいてるのだ、というのがはっきりとわかるようになる。

同じように不幸に生まれてきたのに、なんで、この人は、こんなに立派なん?
そう疑問に思う事が多いのだけど、結局はそれは、自分の決断一つなんだよね。

「良い方に行くぞ」

そう思う事だけだと思う。その気持ちがあるかどうかだと思う。

で、その気持ちさえ持てれば、実は人生はあっという間に好転するのだ、という気がしてる。

それはとどのつまり、「正しい目標値」を探したかどうかだけなんじゃないの? という気がするのだ。その人が「よく生きよう」と思ったかどうか。それだけだよなぁ。

齋藤孝さんは、その「正しい目標値」をキチンと探して、しっかりと自分のものとして持ち得た人で、その「正しい目標値」を持つということが、どんな感じなのかを書いてくれているのが、この本なのだ、ということなんだと思う。

「学問のすすめ」は数百円で売られているわけです。その数百円で齋藤さんは「正しい目標値」を獲得しちゃったわけですよね。それはやっぱりすごいことなんじゃないかなーって思う。

なんだかんだ言っても、日本というこの国を支えているのは1%の大企業ではなくて99%の中小企業なわけですよ。
で、その中小企業の社長のような地べたをはいずり回りながら生きているような人は、やっぱり正しく本を読んでると思う。

だって安いもん。本。

日本は大学がキックアウト制になってないから、「大卒」なんて本当に飾りでしかない。欧米のように勉強しないからおん出されるってことがないからね。

でも、現実の社会で何かをしようと思ったら、とにかく圧倒的な知識がものをいうわけですよ。そうなると、実は大学出てからが勝負なわけです。

だから大卒に限らず「できる人」は軒並み勉強しているのが、この日本という国の面白いところなわけです。

本当に正しく勉強している人はそれほど多くはないのだと思うけれど、それでも組織の長より現場にいてる人がキチンと必要な知識を深めているというのがこの国の大きな特長だと思うわけで。

そういう環境を考えた時、この「座右の諭吉」という本は二重の意味で面白いんですな。「正しい目標」を指し示すとともに「あこがれる力」の楽しさと効率の良さを伝えてくれているわけで。

いや、実は内容的にはあんまり感動しなかったんだけどさ。
でも、諭吉の生涯が勉強できたのと、「あこがれる」事の楽しさを伝えていると言う意味では、なかなかに良いのではないかと、私は思うわけです。

興味のある方は、ぜひ。

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