この日は世間的には、阪神優勝なんでしょうが、私的には、あんまり感慨がない。野球ってあんまり好きじゃないから。

ということで、一人でぼーっとしててもつまらないので、噂の「座頭市」を見に行くことにする。

なんつーか、北野映画って今まで見たことなかったんですね。観たいなとは思いつつ、あんまりアートされたら面白くねぇよ、ということで。

で、「座頭市」は、北野監督初の娯楽作品ということなので、見に行きました。

単純な感想を言うと、いやー、なかなか面白かった、なんですけどね。
で、凝った感想を書き出せば、すごく色々言えるんだけどね。映画好きですから。音の使い方とかさぁ。うまいのよなー。カット割もさぁ、大胆なんだよなー。映画好きが見ると、「おっ」とか思っちゃうよな、これは。わざとかどうか知らないけど、ルール無視とか平気だし。

だから、総合して言うと「マニアック度の高い娯楽作品」ということになりまして、僕のいつものパターンで言うと、こういう作品にはすごーく高い点をつけたくなってしまう。

作家としての表現と大衆娯楽としての責任の両方をキチンと果たしているという意味では、高い評価を与えたいのです。

でもなー、これは個人的好みでしかないけど、ちょっと「計算しまくりよなぁ」というところが鼻につくというのはありますなぁ。

とにかくすごく計算されてる。演出からカット割から編集から、テーマの持っていき方から、ギャグのバランスから、マスコミ受けする話題づくりまでひっくるめて。

いやまぁテレビの世界の人ですからね、そこいらあたりの計算がピシッとしてるのは当たり前って言えば当たり前なんだけど、あまりに計算があざとくて、ちょっと息苦しい感じはあったかなぁ。おおらかさに少し欠ける。

いやまぁ、基本は評価高いんだけど。
79点かな。私、よっぽどでないと、80点は出さないんですけど、それに近いです。
なかなか大したもんです。

-----------------
でもねぇ、作品が計算づくというのもあるけど、ビートたけしという人は、とにかく「したたか」な人だなぁと思いますです。

ビートたけしの映画デビュー作は?って質問すると、よっぽどの映画好きの人でも「戦場のメリークリスマス」とか言うのよな。

いやー、そうじゃないんすよ。実は。この人、ツービートで人気絶頂の時に、松竹系でつまんない喜劇にゲスト出演してるのよな。ゲスト出演。
それが最初。

人気絶頂の時だからさ、主演で行っても良いはずなのに、ゲスト出演なのよなぁ。

だから多分、その時から映画をいずれは作りたいと思ってたんだよね。きっと。いきなり人気者が主役とかで映画の現場に入っていったら、スタッフから煙たがられるでしょ?なんかそういう「計算」だった気がするのよなぁ。

で、目立たず目立たず、ちょっとずつ映画界に馴染んでいって、人脈作って、それから満を持して「戦場のメリークリスマス」だったわけですよ。

ものすごーーーく計算してるのよね、この人。

で、実は「北野映画」だってそうなんだよねー。ようするに、小予算で海外で賞を取るというのは、日本国内で小予算で映画を作ってる映像作家たちと同じ戦略なんですね。
きっと誰かからそういうやり方を聞いて、キチンとその通りにやってきたんだと思う。

で、地固めして、地固めして、それでやっと、「娯楽作品」を撮ったってことですわな、きっと。
これが最初からこういう作品を撮ってたら、あんまり評判は良くなかったと思うのよなぁ。「ビートたけし」のイメージがあるもんね、国内では。
で、ある程度予算を出してもらえるのは、やっぱりまずは国内ですからなぁ。

そういう意味で計算がキチンとあるんだろうなぁということで、したたかだなぁと思うのです。

だから、これは本当の意味で「北野武メジャーデビュー第一作」なんだと思うのですよ。撮りたい「娯楽作品」を撮った、という意味で。

あの金髪だって、わざと撮影に入る少し前からやってたんだけど、当人が「早めにテレビとかで金髪見せちゃってさ、眼をならしといたんだよ」とか言ってる。

「あー、やっぱりか」と思ったもんね。金髪にしてみて、それから座頭市を金髪にするアイディアを思いついたように世間には見せてるけど、絶対に違うね。最初に金髪の座頭市のアイディアがあって、それからどう展開するかを考えたんだよね。

で、そういうしたたかな計算というのが、すべてフィルムから見える。全部計算。いっさいの遊びはない。すべてのカットが計算なんだよねー。

で、その計算というのは、「最悪、映画の基本みたいなことも、守りたくなかったら守らなくてもいいんだから、気にしなくても大丈夫だろ」というようなことまで計算しているという計算なんだよねー。

これを天才と見るか、いやらしいと見るかなんだけど、うーん、僕は半々という見方ですね。天才なんだけど、いやらしさも感じてしまいます、ということです。

ともあれ、誰が見ても楽しめる映画になってるのは、やっぱり絶賛すべきですな。
映画は誰もが見るからこそ楽しいのですよ。じいちゃんばぁちゃん、大人も子供も。カップルも。
ま、今回、カップルが見るにはちょっと辛いという気もしなくはなかったけど、まぁ合格点ですわ。

やっぱり大衆演劇とかわかってる人だからさぁ、そういう大事なところは外さないというのはすごいよね。

あと「ちょっとなぁ」と思ったところもあるけど、それは秘密日記に書こう。ネタバレだし。

コメント

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索