怒涛の入院体験記(2)

2001年5月27日
日曜の日付ですが、まだ、土曜日の日記。(けっこう長くなっちゃったけど、許してね。)

さて、タクシーで川向こうの大きな病院に入る。すでに連絡が来ていたので、紹介状を渡すと、すぐにわかってくれて、看護婦さんが「しんどいですか?」と聞く。「ええ」と答えると、後ろから折りたたみの車椅子を出してくれる。

車椅子!? 重病人みたいやん? とか一瞬思うが、いや、重病人なんやワシは、とあらためて事態を把握しなおす。頭回ってないねん、血が回ってないから。

いざ車椅子に座ってみると、これはラク。そうか、しんどい時は歩くのもしんどいもんやねんなぁ。立ってるだけでもエネルギー必要やねんなぁとつくづく思う。ああ車椅子。押してもらって移動できる車椅子。ああラク。いま思うと、これが相当に良かったように思う。精神的にも病人としての自覚が持てたし、肉体的にも疲労せずにすんだから、メリットは非常に大きかった。侮れない道具である。

紹介してもらったのは、この総合病院の外科部長。最悪、開腹手術の可能性もあるから、外科に紹介されたんでしょうねぇ。そういう意味では、この時点での私は手術も覚悟してたし、大腸ガンの可能性もあるから、死ぬことも考えてたという状態。けっこう悲愴。

で、この外科部長と助手の看護婦さんはプロ。町医者の人みたいな可愛いところはナシ。カルテを読んで、指での触診(1日に二回も尻に指つっこまれたんだゼ。たまらん。)も当然みたいにやる。あわてることもない。ただ冷静に必要な検査項目を書き上げるのみ。

「出血はしているが、場所もわからん。だからまず検査ね。」

という答えのみ。とにかく具体的事実のみしか相手にしないという態度。プロやねぇ〜。でまぁ、尿・採血・肺活量・心電図・X線と、その総合病院の2階とか7階とかを移動しつつ検査を次々にこなしていったのでした。

で、やはり、一番のポイントは胃カメラ。

まいりました。降参です。これは強力かつ強烈でした。

「普通、前日は絶食と違うん? いきなり突っ込むつもりか? 緊急入院ちゅうのは、そういうことか? うう〜むむむむ。」と聞いた時はかなり焦りましたが、いざ胃カメラの番になったら腹はすわっておりました。

「少なくともこれで胃に何もないとか、そういうことはハッキリするやん。」と、自分に言い聞かせつつ検査室に向かったのであります。

まず、うがいの要領で喉にためておくタイプの麻酔。ふ〜ん、こんな麻酔するんや。診察台に横になってマウスピース。ファイバースコープが入る。

おえっ。

おえおえっ。

えづきまっせ。これは。これは苦しい。うげー。最初はムチャクチャに苦しいのだけれども、一度入るとちょっとラク。でも、途中で精神的に嫌だなとか思うとつい「おえっ」となる。よっぽどリラックスしてないと、アカンね、こりゃ。

とは言うものの、まさに医者が腹の中に顔をつっこんで覗いて見るのと同じだから、これほど安心感の大きい検査も他にはない。カメラを操作してるのは、カメラマンではなく、お医者さんなのだから。オエオエ言いながらも、カメラが胃を越えて十二指腸にまで進み始めた時は、「そうや! こんなに、オエオエ言うてるんやから、ついでに奥までしっかり見といてくれ! でも、できるだけ短時間で見てね。」とわけのわからんことを考えたくらい。

良くはわからないが、十二指腸を調べてた時などは腸をふくらませるためか、透明なグリス状のものを、胃カメラの操作している手元のところから注入。なななな、何すんねん、人の腹の中に何入れるねん! という感じでしたが。

あるいはまた、この手元のところからカテーテルのようなものを入れて、粘膜の採取なども、したらしい。非常に長い針金状のものをファイバーの中にシュコシュコと挿入していた。うへー、こうなるともう、食道も胃も、自分のものとは思えませんな。天下の公道です。開かれた道です。なんでも通っていきます。行き来してます。ああ〜、もうどうとでも好きにしてくれ! という感じ。

いや、ほんま、胃カメラはすごいです。ものすごいです。

でも、もう二度と飲みたくなぁ〜い。あんな苦しい思いをするのは嫌だぁ〜。特に、どうしても時たまオエエエエッとなった時に、付き添ってる看護婦さんから「落ち着いて落ち着いて。肩に力入ってますよ。力抜いて。はい、鼻で息しましょう。口で息するとしんどいですよ。」とか言われるのが子供になったみたいですごく情けない。いや、わかってるんです、落ち着こうとしてるんです。でもオエエエエってなるんです。とか思う。これが大変情けなくって嫌だ。

ともあれ、そうやって胃カメラと格闘していると、カメラを操作している先生が、「なんやこれ、潰瘍か?・・・・うん、十二指腸潰瘍。」とか看護婦さんに言ってるのが聞こえる。

「やっぱり十二指腸潰瘍やん。ワシの見立ての通りやん。心配することなかったんちゃうん?」とか、急速に安心してしまいました。やっぱり胃カメラ。苦しい思いをするだけのことはあるね。すごいね、とか思う。

その後、救急用のベッドに一時的に案内されて一休み。病院のパジャマを渡されたので、即、着替えて、とりあえず横になる。いや、本当にしんどかったのよ。貧血気味だったし。で、横になると、とにかくやたらと安心。結果は出てなくても、とにかく最善を尽くしてくれる医者と看護婦はすぐそばにいるわけだし、ベッドで横になってりゃ体もラクだし。「ああ、ええなぁ、ラクやなぁ。ほぉ〜。」とやたらと気持ちが落ち着く。

ま、たぶん胃カメラの時に肩に注射もされたんだけど、あれきっと精神安定剤か何かなんよな、それのせいでこんな気分なのよな、とも思いつつ、やたらとホッとした気分だったのであります。

で、しばらくすると、担当医の方が検査結果の報告に来てくださる。

「病名は、十二指腸潰瘍ですが、胃カメラで見たところ、すでにふさがりつつあります。ですから、手術も必要ありません。血圧も少し低くはなってますが、正常値の範囲ですから、必要ないでしょう。順調なら、月曜日には退院してもらえると思います。」とのこと。ひたすら、ひたすらホッとしたのでありました。

これにて入院体験記、一巻の終わり、めでたしめでたし・・・となれば良いのですが、実はまだちょっと続く。てへへ。ということで、また明日の日記へ。


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