企業は社長で全然変わるなぁ。
2005年12月12日 ゲーム土曜日にドラクエの話から、任天堂の山内前社長の批判文になってしまって、「でも、いまの岩田社長はいいよなぁ」と思いつつ、ググってみたら、いまさらではあるけれど、今年秋のゲームショーでの岩田社長の基調講演のビデオがあって、見入ってしまった。
これなんですが。
http://www.nintendo.co.jp/n10/tgs2005/movie/index.html
いやー、実に素晴らしい。ほんとに岩田さんはいいなぁ。前の山内さんとえらい違いだ。
僕が書いた批判文を読んでから、岩田さんの講演を聴いてもらうと、いかに岩田さんが物事の本質をとらまえているかが良く分かると思う。
なんて言うのでしょう、山内社長が「裏も表もある人」だとすると、岩田さんは「表側だけに力を入れる人」って感じなんですよねー。
たとえば、山内さんが言った「一強皆弱」みたいなことは言わない。
「一強皆弱」というのは、「ゲーム機のような、あそび道具は家庭にはせいぜい一社しか入れない。だから、一社だけが強くなれて、あとは皆弱いという状態になるのだ。」という考え方。
で、実際ファミコンというのは猛烈に売れたから、この言葉がすごく正しいように見えて、ゲーム業界の人はみんな、そんなイメージを持ってたわけです。
でも、冷静に実際の家庭を見てみれば、本当は「ゼロまたは複数」なんですね。つまり「やる人は何台も買う」「買わない人は全く興味なし」なわけです。それが現実なわけ。
実際、発売当初こそ機器の価格が高いというのはあるけれども、ゲーム機はプラットフォームとして定着させたいから低価格にすることが多い。で、二万円切ったらね、そんなもん好きな人は何台も買っちゃうわけですよ。
だから本当の本当は「一強皆弱」っていうのは、大嘘だったんだと、いまにして思う。で、表向きは「一般社会は遊びという要素に金をつぎ込まないものだ」というキマジメなメッセージのふりをして、実は「だからファミコンだけ買っておけばいいんだよ。」という市場独占のための、業界人洗脳発言になってたんだと思うわけです。
たぶん、山内氏は他社が任天堂と同じく低価格戦略で攻めてきたら、家庭で共存してしまうということは読めてたんだと思う。
だって豪勢な料理なら一万、二万当たり前ですよ。そらゲーム機くらいひょこひょこ買うでしょう。
でも、そうなると「ソフトを大量に焼いて儲ける」という任天堂のビジネスモデルは崩れるんですね。みんなが同じゲームをやってくれないと任天堂は儲からない仕組みになっていた。時間だけは有限ですから。だからこそ「一強皆弱」というイメージを、どうしても定着させたかったんだと思う。ゲームの長時間化も、「一強皆弱」というイメージ定着には願ったりかなったりだった。
で、実際、ROMのような半導体メディアから、CDやらDVDメディアに変わったので、大きく儲けの構造自体は変わりつつあるわけです。(まだ、ユーザーがそこまで育ってないので、いまだに有名タイトルしか売れないけどね。)
話は長くなったけど、とにかくそういう「裏」の事情もあっての「一強皆弱」発言だったはずなわけです。
でも、岩田さんの基調講演を聴いてるとそうじゃないのよなぁ。本当にゲームというものの市場性ということをキチンと考えてるんですね。そんな自社が儲けるための「裏」なんてない。「表」の意識、ゲーム業界そのものをなんとかしようという、そういう前向きな思いであふれている。
「ああ、社長が替わると、こんなにも変わるものか」
と、僕なんかは思うわけです。裏がないよなー、いいよなー、さわやかだよなーって思う。
ほんと、この基調講演はいいわ。
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そういうことを考えると、あのアップルも同じなんですねぇ。
私は昔、すごくMacが嫌いだった。で、そのマック嫌いだった時期というのは、ようするに当時の社長であったジョン・スカリーが、創業者のスティーブ・ジョブズを追い出して君臨してた時なんですな。
ジョン・スカリーはダメだった。やっぱりペプシだっけ? コーラ屋はコーラ屋だよなぁって思った。
Macをビジネス市場に持ってきて、ウィンドウズと対抗させてとか、そんなユーザーが無意味に混乱するだけのことして業績を伸ばそうとしてた。あかんやろ、それは。
と思ってたら、スカリー君はやっぱり首を切られてどっかへいっちゃったけどね。
で、ジョン・スカリーがやめて、ふたたびスティーブ・ジョブズが戻ってきてからのアップルは実にいい。素晴らしい。アナザコンピュータとしてのマックの位置づけをiMacで明確に表現してみせた。iPodも実に見事だ。すばらしい。
やっぱり社長で変わるよなぁって思うのです。
でもなぁ、いまでこそみんな社長で会社を見るのが当たり前みたいになってきてるけど、昔はそうでもなかったんよなぁ。それこそ単純にブランドだけで、マックだから好き、とか任天堂だからいいとか、そういうことで判断してるだけ。
まぁええねんけど。
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とは言うものの、岩田さんのような人を次期社長に選んだのだから、山内社長はやっぱり良く分かってる人ではあった。性格的にどうしても「裏」の仕掛けをしなくてはいられない人ではあったんだろうけど、やっぱり「表」の顔はちゃんと持ってる。
本当は業界独占が真のねらい目であったけれど、そういうことはおくびにもださず「子供のためのソフトを創ってます」というお題目だけはキチンと唱えた。(ただし、その実、ヒゲ親父が主人公で、価格もバカ高いという、とうてい子供のためとは思えない商品を出していて、本当は本気で子供のことなんか考えてはいなかったんだけど、でもアホな親はだませる。私みたいによっぽどひねくれてなければ、「いいこと言ってる」ようには見える。あくまで建前でしかないんだけど。)
で、すばらしいことに岩田新社長は、この「お題目でしかない良き言葉」に魂を入れてるって感じがする。
山内社長から会社を受け継ぐことは受け継いだけど、実にきれいに、任天堂の「表」の顔だけを上手に受け継いだって感じなんだなぁ。いいわ、ほんとうに。
知ってる人は知ってますが、この岩田さん、あの糸井重里が作ったゲーム、「MOTHER2」が制作途中で暗礁に乗り上げた時に、さっそうと現れて、プログラムを一から作り直し発売にこぎつかせた、伝説のスーパープログラマーでもあるんです。
ようは「作り手」なんよね、もともと。だから「作品」というものに愛があるんだよな。山内さんにはやっぱり愛はなかったと思う。そこが全然違うんだよなぁ。
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ちゅうことで、ここまで書いたけど、でもやっぱ、基本的に、もうゲームはいいよ。
たぶん近々ニンテンドーDSは買うことになると思うけど、来年発売の「えいご漬け」のために買うってのが一番だよなぁ。
もうゲームなんかやってる場合じゃないもん。いまの時代。のんびりゲームしてる人間なんか取り残される時代になっちゃったんだよな。結局。好きじゃないけど。もう時間があったら、自分の能力を磨いて、「よい社長」になるように自分磨きをしないと生き残れない。そういう時代なんだと思う。
やるせないけどね。
これなんですが。
http://www.nintendo.co.jp/n10/tgs2005/movie/index.html
いやー、実に素晴らしい。ほんとに岩田さんはいいなぁ。前の山内さんとえらい違いだ。
僕が書いた批判文を読んでから、岩田さんの講演を聴いてもらうと、いかに岩田さんが物事の本質をとらまえているかが良く分かると思う。
なんて言うのでしょう、山内社長が「裏も表もある人」だとすると、岩田さんは「表側だけに力を入れる人」って感じなんですよねー。
たとえば、山内さんが言った「一強皆弱」みたいなことは言わない。
「一強皆弱」というのは、「ゲーム機のような、あそび道具は家庭にはせいぜい一社しか入れない。だから、一社だけが強くなれて、あとは皆弱いという状態になるのだ。」という考え方。
で、実際ファミコンというのは猛烈に売れたから、この言葉がすごく正しいように見えて、ゲーム業界の人はみんな、そんなイメージを持ってたわけです。
でも、冷静に実際の家庭を見てみれば、本当は「ゼロまたは複数」なんですね。つまり「やる人は何台も買う」「買わない人は全く興味なし」なわけです。それが現実なわけ。
実際、発売当初こそ機器の価格が高いというのはあるけれども、ゲーム機はプラットフォームとして定着させたいから低価格にすることが多い。で、二万円切ったらね、そんなもん好きな人は何台も買っちゃうわけですよ。
だから本当の本当は「一強皆弱」っていうのは、大嘘だったんだと、いまにして思う。で、表向きは「一般社会は遊びという要素に金をつぎ込まないものだ」というキマジメなメッセージのふりをして、実は「だからファミコンだけ買っておけばいいんだよ。」という市場独占のための、業界人洗脳発言になってたんだと思うわけです。
たぶん、山内氏は他社が任天堂と同じく低価格戦略で攻めてきたら、家庭で共存してしまうということは読めてたんだと思う。
だって豪勢な料理なら一万、二万当たり前ですよ。そらゲーム機くらいひょこひょこ買うでしょう。
でも、そうなると「ソフトを大量に焼いて儲ける」という任天堂のビジネスモデルは崩れるんですね。みんなが同じゲームをやってくれないと任天堂は儲からない仕組みになっていた。時間だけは有限ですから。だからこそ「一強皆弱」というイメージを、どうしても定着させたかったんだと思う。ゲームの長時間化も、「一強皆弱」というイメージ定着には願ったりかなったりだった。
で、実際、ROMのような半導体メディアから、CDやらDVDメディアに変わったので、大きく儲けの構造自体は変わりつつあるわけです。(まだ、ユーザーがそこまで育ってないので、いまだに有名タイトルしか売れないけどね。)
話は長くなったけど、とにかくそういう「裏」の事情もあっての「一強皆弱」発言だったはずなわけです。
でも、岩田さんの基調講演を聴いてるとそうじゃないのよなぁ。本当にゲームというものの市場性ということをキチンと考えてるんですね。そんな自社が儲けるための「裏」なんてない。「表」の意識、ゲーム業界そのものをなんとかしようという、そういう前向きな思いであふれている。
「ああ、社長が替わると、こんなにも変わるものか」
と、僕なんかは思うわけです。裏がないよなー、いいよなー、さわやかだよなーって思う。
ほんと、この基調講演はいいわ。
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そういうことを考えると、あのアップルも同じなんですねぇ。
私は昔、すごくMacが嫌いだった。で、そのマック嫌いだった時期というのは、ようするに当時の社長であったジョン・スカリーが、創業者のスティーブ・ジョブズを追い出して君臨してた時なんですな。
ジョン・スカリーはダメだった。やっぱりペプシだっけ? コーラ屋はコーラ屋だよなぁって思った。
Macをビジネス市場に持ってきて、ウィンドウズと対抗させてとか、そんなユーザーが無意味に混乱するだけのことして業績を伸ばそうとしてた。あかんやろ、それは。
と思ってたら、スカリー君はやっぱり首を切られてどっかへいっちゃったけどね。
で、ジョン・スカリーがやめて、ふたたびスティーブ・ジョブズが戻ってきてからのアップルは実にいい。素晴らしい。アナザコンピュータとしてのマックの位置づけをiMacで明確に表現してみせた。iPodも実に見事だ。すばらしい。
やっぱり社長で変わるよなぁって思うのです。
でもなぁ、いまでこそみんな社長で会社を見るのが当たり前みたいになってきてるけど、昔はそうでもなかったんよなぁ。それこそ単純にブランドだけで、マックだから好き、とか任天堂だからいいとか、そういうことで判断してるだけ。
まぁええねんけど。
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とは言うものの、岩田さんのような人を次期社長に選んだのだから、山内社長はやっぱり良く分かってる人ではあった。性格的にどうしても「裏」の仕掛けをしなくてはいられない人ではあったんだろうけど、やっぱり「表」の顔はちゃんと持ってる。
本当は業界独占が真のねらい目であったけれど、そういうことはおくびにもださず「子供のためのソフトを創ってます」というお題目だけはキチンと唱えた。(ただし、その実、ヒゲ親父が主人公で、価格もバカ高いという、とうてい子供のためとは思えない商品を出していて、本当は本気で子供のことなんか考えてはいなかったんだけど、でもアホな親はだませる。私みたいによっぽどひねくれてなければ、「いいこと言ってる」ようには見える。あくまで建前でしかないんだけど。)
で、すばらしいことに岩田新社長は、この「お題目でしかない良き言葉」に魂を入れてるって感じがする。
山内社長から会社を受け継ぐことは受け継いだけど、実にきれいに、任天堂の「表」の顔だけを上手に受け継いだって感じなんだなぁ。いいわ、ほんとうに。
知ってる人は知ってますが、この岩田さん、あの糸井重里が作ったゲーム、「MOTHER2」が制作途中で暗礁に乗り上げた時に、さっそうと現れて、プログラムを一から作り直し発売にこぎつかせた、伝説のスーパープログラマーでもあるんです。
ようは「作り手」なんよね、もともと。だから「作品」というものに愛があるんだよな。山内さんにはやっぱり愛はなかったと思う。そこが全然違うんだよなぁ。
---------
ちゅうことで、ここまで書いたけど、でもやっぱ、基本的に、もうゲームはいいよ。
たぶん近々ニンテンドーDSは買うことになると思うけど、来年発売の「えいご漬け」のために買うってのが一番だよなぁ。
もうゲームなんかやってる場合じゃないもん。いまの時代。のんびりゲームしてる人間なんか取り残される時代になっちゃったんだよな。結局。好きじゃないけど。もう時間があったら、自分の能力を磨いて、「よい社長」になるように自分磨きをしないと生き残れない。そういう時代なんだと思う。
やるせないけどね。
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